「鑑定士と顔のない依頼人」を観ましたー。

女の人が苦手な鑑定士が、広場恐怖症で人前に姿を現さない女性から屋敷中の美術品の鑑定依頼を受ける。
次第に心を開いていく二人。
美しい映画。しかし忘れてはいけない、これはあくまでサスペンス。


ネタバレしてしまいます。
嫌だったら読まないでくださいね。


偏屈な鑑定士が、人を愛することを理解する話――ではありません。
正直、途中までそういう展開だと思っていましたし、どこかでそれを望んでいたんですね。
なんせ私はハッピーエンド好きですから。
でもこの映画「サスペンス」枠なんですよ。ロマンス枠じゃないんですよ。

それが証拠に途中まで心がざわつく伏線がありました。
例えば、鑑定士はオークションで、自分が欲しい絵を友人を雇って贋作と偽り、価値を落として落札していました。
自称、友人と名乗る男は鑑定士の男から、それで手間賃をもらっていましたが少ないと愚痴をこぼしていました。美しくない要素ですし、それがあとで何も起こらないわけがないのです。

広場恐怖症の依頼人である女性は姿を現さない。
けれど、段々姿を現して鑑定士の男と恋愛関係を抱くようになります。
それが本当に美しい女性で。
鑑定士は年老いておりましたが、女性、クレアは27歳。
騙されてないか? って普通なら思うわけですが、鑑定士は女性が苦手なので恋愛をしたことがなく、すっかり信頼しきってしまうのです。
あと、鑑定士が屋敷に通うときにたまに寄る喫茶店。
その店の常連客の中に天才少女がいるようなのですが、主人公らは一切、そこに触れないんですよ。
依頼人と自分のことでせいいっぱいですからね。
物語はそれらに触れず、終わりまで向かう。
「いつこの人たちとからむのだろう」と思っていたところ、後半でようやく喫茶店の少女と会話を交わします。

仕事を引退し、クレアと結婚生活を送るのだと帰宅してみて鑑定士は驚く。
今まで集めてきた女性の肖像画がすべてなくなっているのです。
絵と共に姿を消したクレア、そしてクレアと知り合ってからできた友人たち。
みんな、たぶんグルだったんだと思います。
オークションで鑑定士の代わりに本物の価値ある絵を競り落としていた自称友人の男が主犯だと私は思いました。

喫茶店の天才少女と改めて、会話を交わして鑑定士は初めて少女の名前が「クレア」で目の前の屋敷の本当の持ち主であることを知ります。
最初から少女と会話を交わしておればこんなことにはなりませんでしたが、仕方ありません。

最後はすっかりなにかも失った鑑定士が、クレアが唯一、もう一度行きたい場所と漏らしたプラハの洋食店でひとり待つところで終わります。
その店の思い出すら嘘かもしれません。
約束ももちろんありません。
なのに待つのです。

愛を知らずに死ぬところだった鑑定士が偽りでもいいから愛を知ることができたのだから、これはハッピーエンドだったのでしょうか。
あまりの切ないオチに嫌な夢をみたくらいです。
妹と母もそうらしいです。

以前、どんな読者に対しても「なにかおかしいぞ」と思わせるような描写が物語に欲しいと言われたことがあります。
例えば、ミステリであったならそれが犯人かもしれないといった描写。
黒幕がいるなら黒幕であるかのような描写。
この鑑定士と顔のない依頼人はすっかり私たちは騙されてしまったんですけど、オチがわかった瞬間「ああ、そうか!」と納得がいったのです。あのとき、あのシーン、あの人、確かにおかしかった、と。
オチがすべて読めてしまう話っておもしろくないよね、って考えてしまうのですが、伏線っていうのは誰でにもわからなければ意味がないのです。
この映画をみて「なるほど」とは思いました。

ってなわけで、この映画は水曜にみたのですが、しばらくブルーでした。
私はどんでん返しって好きですけど、それはいい終わり方に限るって思いました。
後味がいい、いい意味で裏切る映画教えてください。

ちなみに、そういう意味では「ゲーム」っていう映画は好きな映画です。
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

▲ページトップに戻る