世間には残念な女子がたくさんいるけど関わるのはごめんだ その10

白百合女子学園に遠征(?)に行ったその日の翌日。

なんだか登下校中、みんながみんな、僕を見ているようで、嫌な感じがしたのだけど教室に入って、その答えがわかった。
黒板に僕と八千草の名前が相合傘の中に書き込まれている。
つまり、そういうことだ。
だから、二人で授業をさぼるとかしたくなかったんだよなー。
八千草といると、どうしても目立つ。

そこへ、タイミング悪いことにもう一人の当事者、相手役とされると八千草が黒髪をなびかせて登校してきた。
ちらりと黒板を見てから僕の前に立つ。
噂のツーショットにみんな、浮足立った。注目される中、彼女が言ったのは。

「やったあ、成瀬! これで恋愛相談部の宣伝になるわね!」
「お前すごいな。思春期のガラスのハートしてないな。もはや鋼の錬金術師だな」
「よっしゃ、この調子で目立つのよ。そして依頼殺到して、みんなの依頼を聞いて――」

そこまで、にこにこと言っていた八千草が、その笑顔のまま固まる。

「ところで、そもそもの発端はあたしとあんたが恋愛できなくて、他人の恋愛を参考にするために立ち上げた部だったよね。違う?」
「いや、そういう流れで立ち上がった部だったのか。はるか遠い昔のことで忘れていた」
「どうも、今の方向だと恋愛できる自信がないのよね。あんたと相合傘に名前入っても、全くときめかないのよ」
「ほうほう」
「たぶん、今この場であんたが『好きだ!』って叫んでも、心に響かない自信はあるのよ」
「ほうほう?」
「好きだ、って告白して、あたしを抱きしめてキスしても無表情でいられる自身もあるのよ。いや、手は出ると思うけどね。殴ると思うけどね。キックは繰り出すわ、血の雨が降ると思うけどね」
「もはや、僕のことが嫌いとしか言いようがないな」

暗い結論に達する。
二人して「はあ」とため息をこぼす。クラスのみんなも、どうやら熱い雰囲気とか「もう茶化さないでよ!」といった甘酸っぱい青春の雰囲気を感じられないようだと悟ったのか、雑談に戻っていった。

「恋がしたいなー」
「お前は、この期に及んで恋したかったのか」
「あ、成瀬。白髪」

八千草が素早い動きで僕の白髪を引っこ抜いた。どうして白髪って色素全くないくせに抜くとき、ものすごい根っこ張っていたかのように痛いのだろう。人体の不思議だ。

「八千草のおかげで苦労しまくりだからな。白髪も増えるわ」
「ストレスと白髪の因果関係は証明されていないわよ。ワカメ食べろ」

八千草がぽい、と白髪を教室に放ろとしたときだ。
高い声がその動きをとめさせる。

頬を蒸気させて言った彼女は知らない子だった。恋愛相談部とやらに来た子なのだろうか。
爽やかな短めの黒髪ショートカット。細い体。ギャルでも委員長キャラでもない、スカート丈。黒のハイソックス。
少し丸みを帯びた顔つきは幼く見える。
かわいい部類に入ると思うけど、一生懸命に訴える台詞がそれか。
にしても、なぜに白髪を捨ててはいけないのか。

「それ、あたしにください。成瀬先輩の白髪!」
「いいけど、使用用途を説明してちょうだい」
「なんで、お前がエラそうにするんだ。元は僕の白髪なのに……って僕もえばる必要はないんだが」

その女の子は恥じらうように言った。なんで恥じらうように言うのだ。僕も恥ずかしくなってくるわ。
「そ、それは言えません」
「言えないことに使うわけ?」
尚も八千草の尋問は続く。こいつ、たぶん後輩を苛めて楽しんでいるな。
もう、いいじゃないか、白髪くらいたくさんあるから直に抜きなさいと言おうとしたときだ。

彼女が意を決したように言い放った。

「わ、わたしは成瀬先輩のファンなんです。成瀬先輩のものなら、なんでも欲しいんです! たとえ白髪でも、使用済みティッシュでも、もう味のしない噛んだ後のガムでも、バスのチケットでも、なんでもです! 今、言った白髪以外のものはすでに持っています! なので、それが手に入ればコレクションが増えます!」
「よし、気に入ったあああ、もってけドロボー!!」
「待て待て待て待てえい!」

今、おかしいだろ。白髪はここにあるとして他のをすでに持っているとか、おかしいだろ。なに、彼女も残念な女子系? ストーカーということか?

「僕に付きまとって何か得があるのか……?」
「いいじゃない、成瀬ー減るもんじゃなしー。はい、これあげるわ」
「やった、ありがとうございます!」
「いいってことよ」

目の前でストレスの具現化(白髪は絶対ストレスと関係していると思う)が譲渡される。
嬉しそうに飛び跳ねる彼女はかわいいと思う。それが白髪に喜んでいなければ。

「ところで八千草先輩と成瀬先輩は付き合っているんですか?」
『いや、完全否定でお願いします』

なぜか二人の声がそろってしまう。目をぱちくりと瞬く彼女。彼女はまた晴れやかな顔になった。

「よかった。じゃあ、まだ望みはありますね。あたしの名前は常盤真凛(ときわまりん)と言います」
「真凛とか、今はやりのキラネームってやつじゃないの」
「お前も微妙な名前だと思うがな」

僕のツッコミは華麗に無視。その真凛が「でも、ちょっと残念かな」と言った。

何がだ。

「あたしが今一番欲しいのは成瀬先輩が肉体関係を持ったあとの使用済み避妊器具が欲しかったんです。相手はあたしじゃなくてもいいので」
「そうか、それは残念ね。あたしが彼女じゃなくて。あなたが使えばいいんじゃない、これから」
「まだ、彼女と決まったわけじゃあ――」

きゃっ、きゃっと話す二人。
僕は絶句したまま動けずにいた。事態の急変についていけてない。
こいつは、近年まれにみるほどの『残念な女子』だぞ。八千草だけでも関わりたくないと思っているのに、この子と彼氏彼女になったら、なんか恐ろしいことになりそうだ。

それなら、まだ八千草の方がマシだ。
あ、そうだ。


「すまない、マリリン。僕は紅子のことが好きなんだ」
「うそこけ、三枚おろしにすっぞ。マリリンって誰が呼んでいいって言った。今日から成瀬はあたしの下僕じゃ」
「なるほど、成瀬の下僕キャラが好きなのね」

常盤真凛がすごい形相で凄んで見せた。
八千草の冷静な分析がどこから遠くから聞こえてくるが全く反応できない。

ほらな、これはやばくなってきたぞ。


つづく?




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コメント

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お久しぶりです!
お久しぶりに覗きにきたら、お話更新されていたので楽しく読ませていただきました☆

成瀬くんと八千草さん、ヘンなひと同士でお似合いな気すらしてきました(笑) そしてまた強烈なキャラが出てきて、しかも堂々と昼間っからエロネタ話す残念な女子が出てきて、続きがますます楽しみです♪

最近の日記もちょくちょく読ませていただきましたー 

共感することが多すぎて、あたしも私生活見なおさなければヤバいな、とおもいました。

あと、書くこと。
次回作の脚本書きたいけど、いくつか候補がある中でどのお話が一番「今」書きたいのか。書くべきなのか。決めるのが難しいです。 

またお邪魔します~

Re: お久です、サワムラさん!

残女子(略しました)という残念な作品を読んでいただきありがとうございました。
なんかダメな方向に転がってきましたが暇がありましたらお付き合いください。
八千草と成瀬はくっつくのでしょうか。お似合い風なのはボケと突っ込みと繰り返している関係のせいでしょう。でも、意外とこういう関係のが長続きしますよね。

もう次の脚本の話なんですね。今回のお芝居観に行けそうにないので残念です。
休みとか合えば行きますので、次の機会を待ちます!

「今」書きたいものが合致しないとモチベーションが下がって中途半端になりそうな気がしますよね。
自分と向き合って一番書きたいものを問うのが割と難しい。

……ところで、サワムラさん日記読みました。ドキドキしました!
コメントしに行きます。

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白百合女子学園に遠征(?)に行ったその日の翌日。なんだか登下校中、みんながみんな、僕を見ているようで、嫌な感じがしたのだけど教室に入って、その答えがわかった。黒板に僕と八千草の名前が相合傘の中に書き込まれている。つまり、そういうことだ。だから、二人で授...
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