君の心が知りたい

「なんか、あたしってさあ、彼と長続きしないんだよねー」

そうお酒を飲みながら愚痴をこぼした彼女は半分閉じかけた目をしながら茶色く染めた髪をかきあげた。
相手をしている青年はちびちびとウーロン茶を飲みながら黙って聞いている。

「しかもさあ、付き合った彼氏全部がみんなかわいくない子と付き合っちゃうの。なんかそういう色物好きな奴に当たるようになってんのかなー。あたしが絶世の美女とかいうんじゃないけど、そこそこかわいい顔はしていると思うのよ。なのに恵まれないのよー」

がたんっと音を立ててグラスをテーブルに置く。
男の方は対して静かにグラスを置いた。
そして、ようやく口を開く。

「君はさあ、結局顔で選んだだけに過ぎないんだよ。相手も君の顔で付き合ってくれたようだけど、いかに君が内容がなくて、かわいくない女の子で、人を見かけで判断するしょーもない人間だってことに付き合ってから気付くというマヌケな相手だっただけさ。大した問題じゃない」

女は目の前の男の言葉に少なからずショックを受けたようだ。
みるみる内に目に涙を浮かべた。
男は涼しい顔をしている。見たらすぐ忘れるような平凡な顔をした青年だった。

「じゃあ、なによ。あたしが悪いっての」
「悪いよ。君はイケメンしか愛さない。いや、イケメンと付き合う自分しか愛さない。それでは何も生まれない」
「……そんな」

女はついに机に顔を伏せた。男は席を立ちあがる。

「まあ、そんなつまらない女の子とお酒を付き合う僕の気持ちにも君は気付かないんだろうな。何せ、人の気持ちなんて考えたこともないんだから」

人が去る気配。座敷からふすまを開けて男は去っていく。
静かになってから彼女は顔をあげた。

酔いはさめていた。
そして今の言葉を反芻する。

「え、ってことはあんた、あたしのこと好きなの?」

やけに自分の声が響いた。隣りの人に聞こえていたのかもしれない。
顔が赤くなるのはお酒のせいでも大きな独り言をつぶやいたせいでもない。
頭の中で彼の顔が浮かぶ。
見てもすぐ忘れるような平凡な顔立ち。かっこいいのか、そうでないのはか人によって判断はわかれるだろう。
雑踏に紛れればわからない。
そんな彼だけど、声を思い出すと緊張してきた。
グラスを持っていた骨ばった手を思い出すと胸がどきどきしてきた。
彼の言葉を思い出すと顔が熱くなった。

いつもは、かっこいい彼氏と並んでいる自分を想像していたのに今はちょっと違う感情に包まれていた。

――あたしは今、彼の思考をモーレツに知りたい。




おわり。


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