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世間には残念な女子がたくさんいるけど関わるのはごめんだ その7

「たのもおおおおおっっっ……!!」

まさに道場破りかと言わんばかりの声で八千草が4組のドアを勢いよく開けた。
教室は一瞬、静寂に包まれた。

僕は思いきっり他人のフリをしたかったが、八千草が「成瀬そこで突っ立てないで協力して枕崎をフォローするのよ」と声かけてきたので仕方なく無言で教室に入る。

枕埼は半泣きになりながら「もうマジ勘弁、マジ勘弁」とか言っている。
そうだな。直接声かけにいく勇気あったら恋愛相談なんぞ持ち込まないわな。
そんな枕崎に八千草は舌打ちしてから、逃げ出そうとする彼の背中に蹴りをいれた。

床に転がる枕崎。その目の前には席に座って友人とおしゃべりしていた山田紀子がいた。
なんだ、これ新手のいじめなのか?
すまない、枕埼……僕にはどうすることもできない。

枕崎は下から山田紀子を見上げた。
そして意を決したのかすくっと立ち上がり一礼した。

「3組の枕崎修平と申します! 先日、あなたにラブレターを送ったものです。今日は……その返事をいただきに参りましたあっ!」
顔を真っ赤にさせて大声で叫ぶ枕埼。チャらい男だと思ったが決めるときは決めてくれる。
その公衆の面前での愛の告白に教室中が浮き足だった。
「きゃああああああ!」
「マジで? え、マジで!?」
「枕崎って山田のこと好きだったの?」
「あわなくね? でもいいじゃん!」
「返事は? 何、返事は?」

その騒ぎに他のクラスからも観客が押し寄せてきた。携帯で写メールを撮るやつまで現れた。
なんなんだ、このお祭り騒ぎは。
八千草は腕をくんで事のなりゆきを見守っている。
山田紀子が口を開いた。メガネがきらりと光った。

「ひとつ、お尋ねいたします」
「なっ、なんでしょう!」

すると山田紀子はなぜか僕を指差した。教室中の視線が僕に集中した。
なんだ?

「あなたはこの方と友達なんですか?」
『はっ!?』

いきなりの質問にみんな同じように聞き返した。僕もなぜ彼女がそんなことを聞くのか疑問に思った。
枕崎が不安そうに尋ねた。
「と、友達じゃないけど、まさかこいつのことが好きとか……言わないよな?」
「いいえ、違います。むしろその逆です。私はこの男のことが大嫌いなんです。もしこの方とあなたが友達ならお付き合いすることはできません」
「やったー! まったくこんな恋愛不感症男と友達でもなんでもない明るい青年だから付き合っても大丈夫よ! よかったわね、枕崎っ!」
「あざーっす、あざーっすっ……!!」
「待て待て待て待て待て待て待て待ていっ!」
勝手にばんざーいを始めている八千草と枕崎。
今、とっても聞き捨てならないことをあまり関わりのない山田紀子に言われた僕は全くもって無視できないぞ。
僕は山田紀子の机に両手を置いた。

「どうして僕がそんなに大嫌いなんだ。一応理由を聞かせてもらおうか」
「自分の胸に聞いてみればいいでしょう」
「わからないから聞いている」
「仕方ありません。ヒントは中学生の頃の話です」
「? 中学生の頃? 君とはあったこともない」
「私じゃありません……ツカオンに聞き覚えは?」
「ツカオン……、あっ……!」
「私はそのツカオンとは親友なんです」
僕は青ざめた。
世間は狭いぞ。やばい、彼女が彼女の親友だと……?
山田と僕の間で妙な空気が流れた。背中にどっと嫌な汗が吹き出し始めた。
教室中がしん、となった頃に八千草が笑顔で割って入った。

「何何、楽しそうな話ね。わたしもまぜてー!」
僕の黒歴史は放っておいてほしい。
無視をする。
「よかったなー枕崎、末永く彼女と達者でな! さて、僕は教室に帰ろうかな」
「わたしもその話をく・わ・し・く聞かせてほしいなー成瀬くーん」
「あ。3時間目はあれだ、移動教室だ。早く準備して行かないと遅刻するな……」
「とっとと、話せやあああああっ!」
「うごおおっ!?」

八千草の綺麗な右ストレートが頬に炸裂。大げさじゃなくて一瞬、視界がブラックアウトした。
しゃれにしていいパンチとそうでないパンチを彼女はわかっていない。
僕は頬を抑えながら言った。
「あれは、僕が中学生の頃の話です」

教室中が注目したままなので僕は咳払いをひとつした。
「場所を移さないか?」
「ここで話せ今すぐ話せ」
「本当にここで公開するんですか、そうですか――」

どんないじめ? 八千草紅子はいじめを許さないタイプじゃないのか?
仕方ない。僕も勇気を出して黒歴史を告白することにした。

「僕は中学生の頃にツイッターにはまっておりました。主に映画のことや日常のことを呟いていたのですがとあるアカウントの人と仲良くなりました。
最初は男性と思っていたのですが、ほらネットって性別わからないだろ。だから親しく交流していたのですが僕は純粋に友達として彼女は……ツカオンという方はどうやら僕に恋愛感情を抱いていたようなんです。
けど、実際に会おうとは思っておりませんでした。
僕としてはちょっと映画の話をネット上でできたらそれでよかったんですね。ツカオンの背景など知りません。
そんなあるとき、僕のツイッター上のメールフォルダに知らない人からメールが来たんです。
メールには『始めまして。私は親切心からあなたにメールいたしました。あなたが交流しているツカオンですが、注意してください。学校では根暗な奴で全くもってあなたにふさわしくないドブスです』とありました。そのメールには隠し撮りしたと思われる写真が添付されており、確かにあまりかわいくなかった。
でも、だからといって僕は彼女との交流を絶つつもりはなかった。趣味の話は楽しかったからです。
そんな折に彼女から『私の写真を心無い誰かが送ってしまったようです。だから最近のあなたはよそよそしいんですか』とか『どうして会ってくれないんですか』『やっぱり顔が大事なんですね』などと僕を責めるような呟きが送られてくるようになった。
彼女はどうやら巨大な被害妄想にとらわれてしまったようでした。
交流をしているのに、今までより深い交流を求めてきたんです。僕は恋愛ができない。だから彼女とも友達でいるしかなかったんですが……その友達関係も築くのが難しくなって僕はツイッターをやめた」

ざわざわとみんなささやき合った。まあ、誰が悪いのかよくわからない話だ。
ツカオンが気味悪いせいか、心無いやつのせいか、彼女の要望に応えない僕が悪いのか。
けれど、山田紀子は突如として立ち上がった。そして声をあげようとしたとき――。

「お前が悪いんじゃ、ぼけえええええっ!!!」
「ええええっっっ!!!???」
八千草が奇声をあげて高くジャンプしてお得意の回し蹴りをくらわせてきた。
かるーく数メートル吹っ飛び、僕は床を滑った。机も僕の体と一緒にがたがと滑っていく。
どんだけ威力あるんだよ!?

「ぐっ……マジで死ぬ……」

くらくらとしている、僕を見下ろすように八千草が立った。見せパンが見える。
満身創痍すぎて全く持って興奮しないが。
「よし、次の目的が決まったわ」
「な、なんだよ」
「決まってるじゃない。そのツカオンに謝るのよ」
「僕が全部悪いって言うのか」
「そうよ。女の子はひとつも悪くないのよ。私はいつだって女の子の味方なの」
「男女差別だ……」
「あんだと?」

男前すぎる八千草紅子。彼女が不敵に微笑んだ瞬間、教室にいた女子が「やっぱり紅子サイコー!」という黄色い声があがりはじめた。演劇部でも男役にチャレンジしていたな、確か。
男女無差別にモテることで。
僕は、虚しくなって少しだけ、泣きそうになった。


つづく。







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