世間には残念な女子がたくさんいるけど関わるのはごめんだ その6

「おいいいいいいっ!? どうしてくれるんだよおおおお!?」
枕崎が6組の教室にやってきた。
僕はトイレに行くフリをして逃げようとしたがすぐに発見された。
勢いよく詰め寄ってきて胸倉をつかまれる。僕は最近、よく胸倉をつかまれる。
「あのラブレターを下駄箱のところに置いて返事を待ってもう一週間だぞ!? いっしゅうかんっ!」
涙目である。結構、本気なのかもしれないと考えながら僕は彼の手をやんわり、さりげなくどけた。
そして曲がったネクタイを整えながら相手をなだめた。

「まあ。落ち着け。問題は一週間待っても返事がないことや、返事をしない山田さんでもない。あのラブレターを確認もせずに見せたお前が悪い」
「はあっ!?」
僕は一週間前を思い出した。八千草が家に帰って書いてくるーと言って翌日にそのブツを持ってきたわけだがこともあろうに既に封されており中身が確認できないようになっていた。本当は封を破って中身を確認すべきだったが枕崎は素直にそのまま山田紀子の下駄箱に直投したのだ。
どんなことが書いてあったのかは不明だ。

「あ、おはようおはよう、成瀬&枕崎ーっ……どったの?」
明るく片手をあげて教室に入ってきた八千草。僕は片手を差し出した。
「どうせ、お前のことだ。ラブレターのコピーくらい自画自賛するためにとってあるだろう。よこせ、確認する」
「っっっんだとう!? てめえ、わたしのことを馬鹿にしてるなあ!?」
「ないのか」
「あるよ」
「いや、もう勘弁してください、コントとかいいから、もう勘弁してください」
面倒なやりとりをしてから八千草がラブレターのコピーを取り出した。枕崎が違った意味でまた涙目である。
かわいいキャラ便箋で出したようだ。男が出すんだから別に真っ白のものでもよかったのに。なんだか女々しく感じる。
僕は広げて目で追った。

『 拝啓 山田紀子様。

前略、いかがお過ごしですか。
僕は元気です。
僕とは誰だろうとお思いでしょう。吾輩は枕崎修平である。名前はまだ、ない。
生か死かそれが問題であるが、あなたはいかがお過ごしでしょう。
僕はやっぱり元気です。

西から上ったお日様が東へ沈むのを眺めているたびに今日も告白できなかったと悔いる毎日です。
バカボンじゃありませんよ(笑)
僕はあなたを体育の時間に一目見たときから好きになりました。
なぜ体育のときだと思いますか。あなたが体操服を忘れて友人に借りた日がありましたね。
そのとき着用していたのが小さな体操服でその、グラマラスな体つきが強調されており僕は普段のあなたから考えられないギャップに萌えました。
薔薇は鼻を近づけないと香りにはなかなか気付かないと思います。僕はもっとあなたに近づきたいと思いました。
あなたは俊敏な小鹿を思わせます。僕はその小鹿にまたがりたい。

大切なことはね、目には見えないんだよ。

好きです、付き合ってください。


あなたの枕崎修平より 』

僕は絶句した。枕崎も絶句している。
にこにこしている八千草。僕は色々な言葉を飲み込んで言った。

「……いいんじゃないか」
「こら、お前、完全に投げただろう!? どうせ他人ごとだと思って丸投げしただろ!?」
「そんなことないさ。随所に散りばめられた名言の数々。山田さんは君の意外な素顔に絶句しているところさ」
「絶句、ってなんだよ!」
「なによお、枕崎はわたしのこの徹夜した文章にいちゃもんつけるわけえ?」
「つけるわっ! 徹夜って嘘だろ!?」
「うん、うっそー」
「てめ――っう、へぶしっ!?」
枕崎が八千草に手をあげようとして逆に平手うちをかまされる。すごい小気味いい音に教室にいた奴らが振り返ったが関わってはいけないとまた個々の雑談に戻る。
このクラスは八千草をけっこう、恐れている。
「やられる前にやれ、がうちの家訓なの」
「いたいよーいたいよー」

僕は枕崎に同情した。恋愛相談部なんぞという、できたての怪しい部に頼るからこうなるのだ。
この恋は終わった。そう思った矢先、八千草が枕崎の襟首をつかんだ。

「とりあえず、ラブレターの返事をもらいに行くわよ」
「えっ、今から!? 直接!?」
「そ」

驚く枕崎。二人を廊下にいるクラスメイトがさけていく。なんだかまたやっているよ、とひそひそと囁かれているが彼女はまったく気にしない。
後ろ向きで倒れそうになりながらも枕崎は連行されていく。
僕も小さくため息をついてから後を追った。


つづく。




スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

▲ページトップに戻る