世間には残念な女子がたくさんいるけど関わるのはごめんだ その3

放課後。

僕は八千草からひたすら逃げ続けた。自分のことを見透かされているようでいやだ、っていうのもあるけど「好きな人ができないタイプ」なのに恋愛相談部なんて人の事情に首を突っ込めるわけがない。
そういうのは、クラスにいる……そうだな、望月真奈美みたいなやつに頼めばいい。

クラスというのはいくつかの友人のグループに分かれているものだがそれは社会の縮図のようになっており小さなグループも実はどこかの「派閥」に属していることになる。
八千草はイレギュラーキャラとしても、その望月真奈美というのはクラスのうちの二大派閥のうち、ひとつの族長に値する人物だ。つまり女ボス。
スカート短め、化粧ばっちり、それは常識としても望月はギャル風の女子ではなく体育会系女子で女子バレー部のキャプテンだ。彼女に逆らえばクラスからはみ出されるのは間違いない。
しかし、そういうやつの方が他人の恋愛の相談にのれるし、また強引にも解決できそうだ。

「で、わたしがどうして、あなたを恋愛できないタイプと見分けられたと思う?」
「うわっ!?」

にゅっ、と八千草がでてきた。僕はというと美術室の隣の準備室という物置に隠れていた。ここは鍵が開いていることが多いのだ。しばらくここに隠れて彼女を巻こうと思っていたのだが……どこかにGPS仕込まれているのか?
「逃げても無駄よ。携帯であなたの居場所どこでも確認できるようにお友達登録しておいたから!」
僕の考えを読み取ったのか八千草がほこらしげに携帯の液晶をかかげてみせた。
あれ? これって個人情報知っている友人にしか使えないような気がしましたが。
「メアドなど教えてましたっけ?」
「あんたの友人の友人から聞いた」
「………」

抵抗しても無駄だ。おとなしくお縄につけと誰かに言われたような気がした。こいつの顔の広さを侮ってはいけない。
僕は嘆息して丸椅子に腰かけた。
「さっきの質問の答えなんだけど、どうして君は僕の性質がわかっただ?」
「ああ。簡単よ。わたしは人を観察するのが好きなんだけど、あんたが望月を見る目が冷たいものだったからね。望月は時々クラスで彼氏といちゃついているでしょ。キスとか教室でしているし。わたしは青春っていいなあと思って写真こっそり撮ってHPで「みよ、これがリア充だ!」って載せてみたりするんだけどね。あ、ちゃんと名前とか伏せているし、目元も黒い線いれててるわよ」

「僕が冷たい目線ね、ふーんって君はいつか警察に捕まりそうだな」
「それにね。わたしも恋愛できないタイプなのよ」
「どうして?」
「話せば長くなるわ」
「かいつまんで話せ」
「わたしは幼い頃から年の離れた兄を尊敬していたし、よく遊びに来ていた兄の友人のことも好きだった。けれどある日、彼らが部屋で抱き合っているのを発見したの。彼らはホモだったのよ」
「………あ、そう」

なんだか微妙な話を聞いてしまった。いたたまれなくなって僕はつい自分のことを話した。

「僕もかいつまんで話すと、君ほどの事情じゃないがうちの家には姉が三人もいて父は生まれたときから他界していて男はうちに僕だけだった。女性の日常をずっと眺めていると女性が苦手になった。女の子はかわいい生き物ではない」
「そんなことないわよ。わたしはかわいい生き物よ」
「君は限りなく姉に近い」
「じゃあ、お姉さんたちはかわいい生き物よ」
「かわいい生き物の定義が変わる」
「かわいいって言えんのか、貴様ー」

軽く胸倉掴まれたので僕はまた冷静に彼女の手をどけた。
「で、わかった。とりあえず君が飽きるまで恋愛相談部とやらをやってみよう。君は飽き性だからたぶんもって半年くらいだろうし。具体的にどうやって相談を持ち込んでもらうんだ」
「やっと、その気になったのね! 明日早朝から呼び込み始めましょう!」
「ん? 呼び込み?」



翌日。

校門の前で彼女のお手製のビラを持って僕は文字通り「呼び込み」をしていた。

「恋愛相談部かいせつー! 相談うけたまわ、うけまわあり、あれ? 承りますーっ!!」
「………」
「ちょっと、成瀬の声が聞こえない。おはようございまーす。恋愛でお悩みのみなさまーっ、気軽にご相談くださーいっ」

周囲の冷笑。
指を指して笑っているやつ、呪おう。

ところでこれは一体なんの拷問だ?



つづく。
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