世間には残念な女子がたくさんいるけど関わるのはごめんだ。 その2

僕は今、人生で一番暇な時期を謳歌している……はずだった。
だが、八千草という残念な女子が妙な部活に(そもそも部活として認められてないだろう)に勧誘してこようとしてくるのだ。
男子トイレで用をたしているときに、「ごめん、勝手にはいるよ。あ、別にあんたのジョニーには興味ないからあしからず、用があるのは用を足している成瀬なの」
とか他のクラスの男子もいるのに堂々と入ってきて勧誘してきたり、この前も家の前に怪しい人物がいると思ったら八千草だった。
母が「ねえ、彼女!? かわいいじゃない、かわいいじゃない!」とかはしゃいで困った。どこの彼女が家の前で彼氏の帰りをこそこそと待つというのだ。
そんな彼女怪しすぎるだろう。ストーカー気質だ。

そろそろクラスメイトから僕も「あいつ付き合ってるんじゃないの」とかいう声がささやかれ始めたので僕は彼女と話し合うことに決めた。
HR前に登校して鞄を置いたそうそう、八千草が長髪をひるがえして僕の机に腰かけた。僕の前の席に腰かけたのではなく文字通り、僕の机に彼女の尻がのっかった。

「グッモーニン、成瀬博人! 今日もいい天気でお日柄もよく!」
「おはよう、八千草紅子さん」

八千草は僕の平々凡々な名前とは裏腹にまるで芸名のような名前をしている。紅子、なんてつけるかな。古い女優さんの名前のようだ。

「ねえ、考えてくれた? あんた帰宅部でしょう。一応表では吹奏楽部に名前を連ねているけど幽霊部員ってことじゃない。わたしは毎日忙しく青春を過ごしているけど、ちょっと物足りない要素に気づいたのよ。部活と勉学、あと学生に足りないのは?」
「なんだ? まさか恋愛とかいうじゃないんだろうな」
「あたりあたりあたり。即答とか恥ずかしい奴めっ!」
「いや、僕じゃないよ恥ずかしいのは」

なんだかこの会話だけでものすごく疲れる。早く担任来ないかな。なんだか遠巻きにクラスメイトからの視線を感じるぞ。

「恋愛相談部、まだ同好会レベルなんだけど立ち上げたの。みんなの恋愛相談に乗ってあげて、悩みを解決したりするの。ね、楽しそうでしょう?」
「全然。ちなみにメンバーはあと誰がいるの」
「わたしでしょ、あなたでしょ、わたしでしょ、あなたでしょ、わたし!」
「……つまり、全くいないんだな」
「ここに入部希望のプリントあるから名前を書いてー」

僕は黒板の上にある時計を眺めた。担任早くこないかな。話だけは聞いたし。

「名前書いてー」

担任早く来ないかな。話だけは聞いたし――。

「何、シカトぶっこいんてんだ、てめーっ! 書けって言ったら書けやあああああ!」
八千草がついにしびれを切らして僕の胸倉をつかんだ。彼女は他校の不良と喧嘩したこともあるツワモノだ。どうして野放しにされているのだろう。僕が少しだけ彼女より背が高いだけで、平均より長身の彼女の決め技は回し蹴りだった。
喧嘩してもたぶん、というか絶対負ける。
情けないが僕は冷静に彼女の手を胸倉からどけて緩んだネクタイを整えた。

「ひとつ、聞こう。僕のほかにも帰宅部はたくさんいる。どうして僕がご指名なんだ?」
「暇そうだから」
「……他の帰宅部も暇そうだろう」
「だって、バイトもしてないし、バカじゃないから勉強もそんなにがっつく必要ないし、彼女もいないんでしょう?」
「最後のは余計だ」
「あと、そうね。あなた、たぶん好きな人ができないタイプだから眉目秀麗才色兼備なわたしを好きになる可能性がないからね」
「自分で言ってて恥ずかしくないか? って僕が好きな人ができないタイプって?」
「そう」

チャイムが鳴った。しばらく僕は八千草の目を見ていた。黒い目はまっすぐ僕の目を見つめている。
どうして気付いたのだろう。

僕は人を好きになれない。



つづく。
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コメント

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こっちには初めまして

早速読んだよ~o(^▽^)o

続き楽しみにしてまーす☆☆

Re: コメントありがとう!

おお、早速読んでくれましたか!
足跡も残してくださり、ありがとう(^^)

需要があるなら続き書きます!嬉しいです。
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