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人生の分かれ道は。

わたしは人生の分かれ道に立っていた。

左には固定電話。右には、わたしの白い携帯。
母は携帯を持っているのに携帯に出ないことが多いので固定電話。固定電話から繋がる道は安全なお見合い結婚だった。そして右の白い携帯。こちらから繋がる道は気になっている彼との恋愛だ。

私は自分から告白したくはなかった。告白されたい願望があるのにいつだって気のない素振りをして相手に気づかれないまま恋が終わってしまう。男性の知り合いやきっかけはたくさんあった。
あったけれど、どれも何も始まらないまま消滅していく。

そんなとき、母からのお見合いの話がきてわたしは人生で初めての告白をしようか迷っている。
母は好きな人いないんでしょ、彼氏いないんでしょ、こっちにしなさいと強気の姿勢だ。
別にそちらの相手に不満はない。きっとそちらを選んだとしてもわたしは「それなりの」幸せを手にいれることもできるだろう。それなりの苦労も同じくするだろうが、誰と恋愛しても結婚しても同じことだ。
ずっと波風たたない幸せな生活は有り得ず、実はそれは幸せではない。

気になっている彼とは会社の同僚だった。
彼は別の部署の男性だった。うちは建設系の会社だから現場行ったり事務仕事していたり彼はいつも忙しそうだった。男性社員は上はベージュの作業着を羽織っている。
彼を思い浮かべる。
お見合い相手と同じくわたしは彼のことを知らない。
実は周りに彼のことが好きなことを隠しているので情報がまったく入ってこず彼女がいるのかもわからない。知っているのは独身であること、くらいだ。

声をかけてほしいと願っていても彼はあいさつをしてから無駄口をたたくことはなかった。
仕事熱心で関わりのある部署の女性社員と仕事の話をしている程度だ。しかし、無愛想というわけではない。人から話を振られればそれなりに世間話をして和やかに談笑している。
たばこを吸うから禁煙室(わたしは吸ってないのでそれをきっかけにすることもできない)で喫煙者の女性と話しているのも見かける。
……もてないわけではない。

だから話しかけられるのではなく、話しかけないときっと誰かが彼の魅力に気づいて奪い去ってしまうだろう。
今日は日曜日。知っているのは彼の会社用の携帯の番号だけでわたしは図々しいことに仕事が休みの日に仕事以外の電話をその電話番号にかけようか迷っているのだ。
彼はもしかしたら、ぶつっと切ってしまうかも。
もしかしたら出てくれないかも。

と。固定電話から呼び出し音がなり響きわたしは心臓を飛び跳ねさせた。
まだ落ち着かない心臓を意識しながら出ると母だった。

『あんた、お見合いの返事どうするの!?』
「あ……えっと……」
『写真も見てないでしょ。どうするの? お見合いするだけ受けちゃいなさい!』
「うん……わかった」

結局、周りに流されてわたしはいつだって選択してしまうのだ。携帯はもうかけないことに決めた。バカらしい。
だって、彼にかけても彼女がいるかもしれないんでしょ。
もう、知らない。
わたしは、いとも簡単に彼のことを諦めた。


× × ×


お見合い当日。わたしは顔に似合わない派手な振袖をきて厚化粧をしてお見合いに赴いた。
相手は母が通うダンス教室の息子さんらしい。ちょうど年齢も近いらしいが仕事にしか打ち込んでいないせいで結婚をまわりが促さないと一生、独身であるかもしれない男性らしい。
でも仕事だけしている男性って真面目ってことだからともすれば女性が放っておかないだろう。
ってことは何かほかに問題があるから結婚できないのだろうか。
写真をやはり見ておけばいよかったと後悔しながら、わたしは母と男性を待った。

立派な日本庭園がのぞく料亭。高そうな場所だ。母は形にこだわる人だった。別にわたしはどこでもよかったんだけど。こうまでしてしまうと断りづらくなってしまうではないか。
小さく嘆息する。

そこへ「失礼します」と凛とした声がかかり一人の男性が入ってきた。男性の方はスーツだった。
「あ」
「あ」

お互い口を開けた。間抜けな表情をしていたことだろう。
なんとお見合い相手はわたしの「気になっている彼」だった。

「なあに? あなたたち知り合いなの。だったら話は早いわ!」
「ちょっと、お母さん、わたしが勤めている会社の人かどうかくらい調べておいてよね!?」
「あんたの会社名、覚えにくいのよ。それより、早く席をすすめなさい」
「え、ああ、どうぞ」

立ったままの彼に座るよう促す。続いて彼の母親もついてきた。
「どうも、こんにちは」
お上品な母親だった。わたしは居心地が悪くなってきて顔が青くなっていくのを感じていた。
すると彼が気付いた。

「あの、お加減でも悪いんでしょうか」
「そんなことはありません」
「――同じ、会社ですよね」
「ええ」

妙な会話だった。緊張と羞恥ではきそうだった。
彼も顔を赤くして言った。

「お着物、似合ってますよ」
「ほ、ほんとうですか」

あれ。なんだか今の一言でちょっと嬉しくなった。
やっぱり、彼がいい。何気ない言葉がすごくうれしい。お世辞だと思うけど、やっぱりわたしは彼が好きなんだわ。これはラッキーと思うべきなのかも。

「僕は、女性と会話するのが苦手なんです。だから彼女とかなかなかできなくて。本の話ばっかりするから嫌われてしまうのかもしれないし」
「本が好きなんですか!」
「ええ」

思わず大きな声を出してしまった。わたしも本が好きだった。

どうしよう。


これは胸が弾まずにはおれないではないか!!




おわり。
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