タイムマシンにのって【終わりと始まり】4

昔のことだ。
未来の僕が僕に会いに来たことがあった。
僕はまだその頃、学生だったのだけれど未来の僕はもう社会人で明日結婚式をあげるとか言っていた。
タイムマシンができている時代。人々は過去へ飛ぶことができるが未来へは飛んではいけないらしい。
そして過去へ飛んでも過去の自分への接触は避けなければならないとか。

なのに未来の自分は法律に逆らって過去の僕に会いにきた。
何を伝えたかというと「君のお嫁さんはとても綺麗な人でちょっと影のある女性だ。間違えるなよ? まあ、会った瞬間気付くだろうけどな」とだけ言ってすぐに去った。

それから数年間は自分の行動が意味不明だったけれど、彼女に会ってすぐに合点がいった。
「今日からお世話になります」
そういって職場に新しく配属になった女性が「トキコ」だった。
未来の自分の言うとおり確かにすぐにわかった。目があった瞬間電流が走ったかのようだった。
この表現は嘘だろうと思っていたが本当に頭のてっぺんからつま先にまで電流がビビビと通りすぎ動くことができなかった。
僕から声をかけてすぐに仲良くなった。
しかし、いつ過去の自分に自分が「間違えるなよ」とわざわざ法律を犯してまで会いにいくのかわからない。
いつの時空の自分なのだろう?

× × ×

鏡を見ながら僕はため息をついた。
トキコが会社に入社してきて付き合ってから数年。
いよいよ明日はトキコとの結婚式だ。
しかし、僕は結婚までに確認しておきたいことがあった。トキコはいつだって憂鬱そうだった。
それは僕といっしょにいっても同じで笑うときは笑うがやはりすぐに影が落ちる。
彼女には両親がいない。そしてそのことを尋ねると「あまり話したくないの。ごめんなさい」と言った。
彼女には悪いが調べてみるとご両親は自殺したらしい。
幼い子供を残してどうして自殺したのかもわかっていない。
別にお金に困っているわけでも人間関係のトラブルもなかったから周りの人間も憶測すらできなかった。

僕は過去へ飛んで彼女の両親に会うことに決めた。
夜中にタイムマシンが置いてある公共の施設に潜り込み車に乗り込む。
実はここに知り合いが働いており鍵をひとつ開けてもらっていたのだ。前に僕は彼が未来へ飛んで馬券をあてたことを黙っておいたことがあるのだ。
車へと乗りこみ僕は年号をあわせようとした。

指がとまる。
待てよ。その前に僕はちゃんと彼女と結婚できているのだろうか。
どうせ過去へ飛んで人の死を変えようとしているのだ。人の死にかかわることも犯罪だ。だったら一つだろうが二つだろうが同じことで僕は犯罪ついでに未来もみておきたくなった。
僕とトキコが結婚しているであろう未来へ。

ざっと年号を合わせて僕は飛んだ。


× × ×


夜中だったものが昼間になっていた。
僕は高架下に現れていた。なのでゆっくりと移動して車を近くのパーキングに止めておく。
ポケットからコインを入れておいて、これで良し。
そして街並みは僕の時代と変わっていないので僕は僕が住んでいるはずのマンションへと行くことにした。
二人で暮らしているならそこだろう。
途中、スクランブル交差点で信号待ちをする。いつだってここは変わらず賑やかだ。
そして知らずのうちにビルの壁面に浮いている液晶画面を観た。
CMが流れていたがニュースに切り替わる。

僕はそのニュースを見て思わず目を見開いた。
信号は赤から青に変わってみんなが一斉に動き出したが僕だけはそこから動けない。

『時空倫理取締法に違反した者の裁判で今日、判決が下されました。女に課せられたのは遺族求死刑です。遺族が求めたのは女の両親で――』

過去へ飛んで自分の両親を殺されければならないだと?
トキコの写真が画面に出ていた。

僕は混乱した。遺族として出ているのは僕の両親だ。
そして訴えられているのはトキコだった。

ということはつまり僕はトキコに殺されるということになる。

ニュースでは事件が起きた時空は「2011年」とあった。
ここより20年も前だ。
僕は慌ててタイムマシンである車へと駆け戻り過去へと飛ぶことに決めた。



つづく。

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