タイムマシンにのって【終わりとはじまり】3

私は懐かしい自分の家の前に立っていた。
火事で焼失する前の私の家。立ち合いの警察官が中へ入るよう促した。
すると彼らはこの時代の人に怪しまれないように「シールド」を張った。腕時計型の装置のスイッチを押すと姿が透明になるのだ。
タイムトラベルができるようになってから開発されたものだった。
透明になったとはいえ家の周りは私が刑から逃れないように見張りだらけだ。

早くしないと幼いころの私が帰ってくる。
私は意を決して家のドアを開けた。

× × ×

「ただいま」
両親は突然、そういって入ってきた私に目を見開いた。
父はソファで新聞を読んでいたし母はキッチンで皿洗いをしていた。日常のある日の光景。
久しぶりに見る両親に私は涙腺が緩んだ。

「どなた?」
母がまず呆けたように尋ねた。父も無言で立ち上がる。
そうだ。
いきなり現れてもわからないだろう。

私は微笑んだ。

「トキコよ。20年後のトキコ」
「そんなバカなこと――」
「いや、待て母さん。本当にトキコかもしれんぞ。面影があるじゃないか」
父はSFに強い。SF映画もよく見ていたしタイムスリップする映画はたくさん見ていた。
私は、柔軟な父の頭に感謝した。

そして数年後新物質が発見されてタイムマシンに向けた開発が盛んになったこと。タイムマシンが実用化になったことを話した。本当は未来のことを話すのは禁止されている。
けれど、今回の場合は許されるはずだ。
これから彼らはその未来を見ることがないのだから。

「ワインを持ってきたのよ」
私は持っていた紙袋からワインの瓶を取り出した。両親はワイン好きだった。
一緒にワインが飲める日がこようとは思ってもいなかった。
両親の質問にはなんでもこたえた。政治のことや環境のことやタイムマシンのことや流行りのもの……けれど自分たちのことは聞かなかった。
両親は悲しそうなわたしの雰囲気を察してくれたのかもしれない。

中に入っていた睡眠薬で両親はやがてソファで二人並んで眠ってしまった。
私も一緒に飲んだので眠くなってきた。

けれどしなくてはいけないことがある。
部屋のすみにある灯油缶を床にまく。両親のまわりにもかけていく。
そしてマッチを取り出す。

私はマッチをつけてそれを床に放った。
やがてこの家は全焼するだろう。
そして両親の焦げた遺体を幼い日の私は目にしてしまう。

なんて皮肉な話だろう。両親を奪ったのは他でもない自分だったのだ。
私もここで両親と一緒に死ぬことを選択した。
後で私の死体だけ未来の警察が回収してくれるだろうが今だけは一緒だ。


私は両親と楽しく話した今の時間とアキラと出会った時間のためにきっと生まれたきたのだ。
つまらない一生だろうか。

いいえ。
来世で会おうと言ってくれるあの人と出会ったのだからそうではないはず。
優しい両親と出会ったのも忘れない。


炎のはぜる音。
私はそれを耳にしながらゆっくりと目を閉じて眠った。



つづく。
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