タイムマシンにのって【終わりと始まり】

――きっかけといえば、2011年に光よりも早い物質ニュートリノが発見されたときに遡るのかもしれない。

私は裁判にかけられながら、そんなことをぼんやり思った。
いや、それはただの逆恨みというものだろう。
それを挙げだしたらキリがない。そもそも私が生まれてこなければ。父と母が出会わなければ。人が進化しなければ。アメーバが海に生まれなければ。地球が存在しなければ。
表情には出さず私は奇天烈な考えに内心で笑った。

「裁判長、意義あり。ここに被害者の手紙がございます」

みな一様にざわめいた。こちらの弁護人が手にしている白い封筒。
私も知らない手紙。
まさか、彼はだって……。

私は自分のした過ちを振り返る。


× × ×


新物質を発見し事実上タイムスリップが可能となった。
光よりも早いその物質は時間をも超える。その物質を放出するタイムマシンは車の形をしていた。昔に流行った映画の影響で人を乗せて動く物質で思いついたのが車だったからタイムマシンはどれも車の形をしていた。
そして、本来ならそれに伴う免許とガイドが必ず同伴しなくてはいけないのだが私は独断で施設に入り込み、車に勝手に乗り込んだ。
普通の車と同じ原理かと思っていたのだが運転席に入り込むと色々なスイッチがたさくんあり宇宙船の操縦室のように入り組んでいる。
とりあえずネットで仕入れた知識で年号を入れる。時間もいれる。しかし、住所入力がわからない。私はいつ警備員が来るかびくびくしていた。県と町まで入力できたから後はもう細かい場所まではいい。
髪をかきあげる手も震えていた。
私はエンジンをかけて発射した。

× × ×

出るときは夜だったが車の外は明るい。タイムスリップは成功していると思うが目的の場所だろうか。
私は車から降りてみる。降りてなんとなくここが私が昔住んでいた街の風景だと気付く。
ということは合っている。
私は懐にナイフを忍ばせていた。
目的はただ一つ。両親が自殺する前に幼い私を殺すのだ。私の両親は私が遊びに行っている間に家に火をつけて自殺しているのだ。その焼け焦げた死体を見て私は一時的に病んだ。
絵にかいたような幸せな家族だった私は過去のアルバムを見るたびに胸をかきむしりたい衝動にかられるようになった。
どうして、両親は私も一緒に殺してくれなかったの! と幾度となく叫んだ。

タイムマシンで人の死を変えることは違法である。けれど幼い日の自分を殺すならば誰にも迷惑はかけない。
私は両親の死体を見る前の幸せなままの私を殺すことに決めていた。

× × ×


このころの私はまだ幼く小学一年生くらいだった。
友達の家によってから赤いランドセルを背負いながら一人で帰る。途中、幼い私が道端にしゃがみ込んだ。花でもみているのだろう。私はチャンスとばかりに走った。
ナイフを取り出す。
そして思い切り振り上げた。

だが、間に何者かが割って入った。まさか一般人に見つかるとは思っていなかった。
私は興奮していた。何かを叫びながらその何者かともめる。腰を抜かした幼い私に何者かが叫ぶ。
「君、逃げるんだ!」
赤いランドセルが逃げていく。家に帰ってはいけない。
家に帰れば両親はいないのに、死体だけが待っているのに!

「離してえっ……!!」
柔らかい感触が手に伝わる。
そして生ぬるい液体が手についた。うう、と呻いて倒れる人物をみて私は目を見開いた。

「アキラさん……」

男性は私の未来での婚約者だった。
しかし、結婚前日に彼は忽然と姿を消してしまった。
そのはずの彼がなぜ今ここに? と思った。

わけがわららない。
彼は大量の血を流した。アスファルトに流れる血を見ながらそれは非現実的であった。
私たちの時代の警察がくるまで私はまったく動けずにいた。

アキラさんは死ぬ前に私にただ優しく微笑みかけてくれた。



つづく

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