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ただ、一緒に。

私には恋人がいた。
けれど、恋人と思っているのは私だけだったようで、今日付けで私とあいつは他人だ。どうやら私は俗に言う重い女だったようだ。
こういうとき、誰に言おうか迷う。
友達に愚痴を聞いてもらう? それとも、母に言う? 一人で泣きながら自棄酒? 

「――もしもし」

腐れ縁の男友達がいた。私は泣きながら携帯電話をかける。
こいつは、ただ「うん。うん」と聞いている。
私の電話はいつも突然なのに、すぐにこいつは電話に出る。よっぽど暇なのか、留守番電話に切り替わることはなかった。いつだって、突然でくだらない内容の電話。
今回だって失恋のことをただ、聞いて欲しいだけなのだ。
思えば、私はこいつの話を聞いたことはないのに・・・・・・今回の彼氏ができたときだって、付き合い始めの頃はデートが楽しすぎてそのことしか私の頭の中にはなかった。
こいつのことなんて思い出しもしなくて、かと思えば、必要なときだけ電話をかける。
なんて勝手な女だろう。それでも、こいつは黙って聞いてくれる。

一通り、話し終える。沈黙が降りる。
『空を見て』
「?」
こいつの言うとおり、私は携帯を片手にカーテンを開ける。すると大きな白い月が出ていた。
満月だったことに今、気付いた。
『綺麗だねぇ。じっと見ていると吸い込まれそうだね』
「そうね・・・・・・」
『庭のあじさいが、もうすぐ咲きそうだよ。季節はそろそろ梅雨だね』
「・・・・・・ええ」

また沈黙が降りる。こいつの声を聞くと私はなんだか、落ち着いてきていつもの調子に戻る。
「そういえばさ、あんた彼女できたの? 長いこと電話していると怒れられるんじゃない?」
『そんなことで怒るようなら別れるよ』
「バカじゃないの? あんた、私のこと、どんだけ好きなのよ」
『好きなのかなぁ。よくわからないけど、電話くれたらいつでも出ようと思ってる』
「結婚しても? 子どもいて家族あっても?」
『うん』
「複雑な関係になりそうだわ」
『友達だからかな。いつだって他愛もないことや、月が綺麗とかどうでもいいことを気軽に話せる関係は守っていたいんだ。それが僕にとっても逃げ場だと思うから』
「・・・・・・そう、なの」

私は返答に困った。もう一度、満月を見上げる。
本当はこいつも聞いてほしいことがあるのかもしれない。逃げ場、という言葉が酷く浮いて聞こえた。
結構、こいつも苦労しているのかな。仕事の話とか、家族のこととか聞いたこともないけど。

「よかったら、あんたの話聞いてあげるわよ。くだらないことでもいいから話せば」
『いきなりだなあ。僕の話はくだらないけどいいの?』
「いいよ。たまにはね」


私は椅子を窓辺に引いて話を聞く体勢を整えた。



おわり。
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