寂しい風景上の緑の乙女

不毛の地が広がっている。地球上のほとんどが砂漠化したこの世界では灰色の空、赤色の砂地、廃墟と化した建物の沈んだ色、これが全てだった。
生き物たちは退化し地面の中で生きるものへと変わり鳥や猫、ねずみ、身近にあったそれらは地上から姿を消した。

いつでも何かが腐敗したにおいのするスラム街。黒髪の青年は猫背気味に歩きながら時々鳴る腹を憎らしげに押さえた。食料を探しながら転々と歩くもののそれらしいものなど全くありつけないまま今日で3日目となる。なんとか水は得たが口にできるものはその、3日前にモグラのような生き物を焼いて食べたきり。なんだか毒があったらしく下痢気味になったためほぼ食べてないに等しい。

と、通りすぎようとした細い路地から悲鳴が聞こえた。最初は通りすぎようとした青年だった悲鳴がくぐもったものに変わりやがて小さくなったためイラついたようにその路地へと曲がる。
体力はなるべくなら温存しておきたい。もし大勢よってたかって居たなら「俺も混ぜてくれよ」とかなんとか言って助けるのはやめよう。しかし何とか片手間で助けられるなら後味悪くないよう偽善ぶってみよう。

「その食べ物をどこで手に入れたかって聴いているんだよ!」
「あくまで在り処は教えないつもりか!」
「・・・・・・」
相手は二人。そしていたぶられている女の子は大事そうに瓜のようなものを抱えていた。金色の髪をした女の子は白い肌を汚してはいたが傍目でも美人だとわかる。
瞳から涙を流してはいるが、人々が見れば懐かしむ空色の瞳をしていた。澄んだ空。そんなものを見たことがないが話に聞けば青をより一層濃く、それでいて透明な綺麗なものらしい。
たぶん、空はあの子の目と同じかもしれない。
観察するのをやめて壁際に女の子を追い詰めている二人の男の後ろに立つ。気配に気付き振り返ろうとする二人同時に拳を頬に叩き込む。左右に転がる男。まず左に飛んだ男の腹に蹴りを入れ右に転がった男の顔面に足裏を押し付ける。
うめいている間に女の子の手をとる。
女の子は新手が現れたと思って驚いた顔をしている。まあ、あながち間違いではないかもしれない。その手に持っている瓜を後でわけてもらう気満々なのだから。

とりあえず青年は手をとりその場から走り去る。しばらく行き、適当な建物の中に入り込む。ドアを蹴破ったら簡単に倒れた。中には人の気配はせず、無人の廃墟のようだ。
女の子が床にへばりついた。
「どうして・・・私を・・・」
「いや、瓜がうまそうだったから。わけてくれないか」
素直に手を差し出す。女の子はしばらく青年をみつめてから瓜を両手で差し出す。
「あの人たちと違って痛い目あわせて全部とろうとしないから、あなたにはあげる」
「全部、いいのか?」
女の子は頷く。青年はすぐに瓜を割りかじりついた。豊富な水分が滴り落ちる。癒された青年はようやく女の子に質問する。
「どこでこれを?」
「・・・・・・自分で作った」
「栽培したというのか? 国家が内密に行っていると噂には聞くが。水と場所と太陽がないだろ」
女の子は首を振る。そしてきょろきょろと辺りをみまわしてからコンクリートの破片をみつけて手をかざす。
何も言わずながめていると、やがて女の子の手の平から淡い光が現れた。
するとコンクリートの上に土もないのに緑の芽がすごい成長スピードで現れ幹となり黄色の花を咲かせた。花は一瞬で枯れ、小さな種子を。種子は膨らみ何かの果実となった。
熟れた果実を女の子はもぎ取り青年に差し出した。

「どうなってんだ・・・・・・」
「食べて」
言われるまま、丸く赤い実を食べる。熟したその実は今まで食べたことがないくらいおいしかった。甘酸っぱい果実。口の端から汁が垂れた。
「おい、すごいなお前。どうしてこんなことができる?」
「わからない。昔、小さなしおれた花を見たときにかわいそうだな、って思って手をかだしたら復活してそこから色々試してたらこんなことができるようになった」
「いいな、それ。お前みたいなことが世界中の人間にできたらこの世界もちっとはマシになるのにな。他の存在を労わる気持ちが人から退化してなくなったから今こんな事態に陥ったのかも」
笑った青年を女の子は不思議そうに眺めた。この話をして大抵の人が組んでボロ儲けしようとか、国家と交渉しようとか、閉じ込めようとか、研究しようとかした。なのに青年はそんなことを言った。
「そうだ、ちょっとずつ緑化計画っていうのを立てたらどうだ。あんたが芽を増やし誰かが育てて世界をある程度はマシな方向に持っていく計画」
「国家に行かないと無理じゃないかしら」
「国家は独占したがるからなー・・・・・・じゃあ二人からゲリラ的にやる? おもしろそうじゃないか」
「そうね。考えとく」

女の子は建物の外へと出て行く。青年はとりあえず満腹なので後を追わず眠ることに決める。
それにあの女の子とはまたどこかで会える気がしていた。





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コメント

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高瀬さん、こんにちはー^^
このお話は面白いですね。
ショートとしても面白いですけど、ベースとして長めのモノを作った時、ストーリーがいろいろと膨らませそうです。メッセージ性とかも盛り込めそうな気がします。

ありがとうございます。

deltaさんこんばんわー!
昨日、何も考えずに文章が打ちたくなり書いたものです。なので方向が全く決まっていないという・・・コメント頂くとこの話を練ってみたくなりました。メッセージはジブリっぽく? 実は『緑を生やすのには体力を使うため少女は青年を助けるために最後の力を振り絞り巨大な木を生やして死ぬ』とか無理やりなオチを考えていましたがもうちょっと大事に夢想してみます。
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