おじさんと僕

おじさんは疲れたような乾いた笑いをよくする。小学5年生である僕でさえ「乾いた笑い」という、つい難しい言葉を使ってしまう程、その感じがぴったりなのだ。

「おじさんは、ちょっと楽しくないことが今までにあって、こういう笑い方になってしまったんです」
「おもしろくても、我慢できるってこと?」
「そういうのじゃなくてですね・・・・・・そもそも、おもしろいって思えないんです」

にこやかに、おじさんは僕に話す。こうして、おじさんと話していると母は嫌がる。何でもおじさんがバツイチだかららしい。それに子ども相手にまるで大人相手のように話すおじさんは「変わっている」とされていた。

「どうして大人相手みたいに話すの?」
「普通の人は子ども相手にどう話しているんでしょう。私にはそれが分からないからです」
「普通の大人は・・・・・・なんか、下に見て話すよ。子分みたいに思えばできるんじゃないかな」
「君は頭がいいのに、子分なんて到底思えません。駄目な私が子分にならなくてはいけない程です」
「僕はバカだよ。この前のテスト35点しかなかった」
「テストの点数でその人の良し悪しは決まるとは限りません。現に私は小学校のテストは高得点ばかりでした。それでも誰かを哀しませることをしてしまうし、君のお母さんには変人扱いをされているし、君の質問の答えは曖昧なものばかりになってしまっています」
――そう、言ってから、おじさんは乾いた笑いをした。寂しくて、季節で言うと秋のような笑い。

 おじさんは良く自分をバカだと言う。でも、僕がおじさんを好きなのは学校にいる先生たちより先生みたいな気がするからだ。学校にいる奴らは僕たちを子分か友達にしか思ってない話し方をする。
おじさんには子どもがいたみたいだけどバツイチだから、ずっと一緒にいないらしい。だから子どもとの距離感みたいなのが掴みきれないのかもしれない・・・・・とよく母が言っている。

「おじさん、また来てくれるの?」
「君の母さんのお許しを得てからになります。今回は、君の姉さんの高校卒業祝いを渡しに来るという名目があったからです」
「ふーん・・・・・・あ、おじさん良いこと思いついた。姉さんと結婚したら?」

おじさんはきょとんとした。そして「ははっ」と笑った。その笑いは本当に可笑しいみたいで今までに見たことがない笑顔だった。ちょっと僕は真面目だったから恥ずかしくなった。
「君の姉さんと僕は10歳ほど年が離れているからちょっと難しいと思います。それに姉さんはもっと若い人を好きになるに決まっています」
「おじさん、まだいけるって! 僕姉さんにかけあってみるから。ちょっと前、姉さんにおじさんかっこいいかって聞いたら『かっこいい』って言ってたよ」
「ありがとう。少し自信ついたよ」

おじさんの笑顔を見て僕は姉さんを結婚相手にするという人生の目標を得た。だっておじさん笑ったし、自信ついたみたいだし。僕はおじさんみたいになりたいから少しでもおじさんの傍にいたいのだ。
そのためには姉さんと一緒になってもらうに限る。



「ただいまー」
姉さんが帰ってきた。僕は玄関に姉さんを迎えに行った。



おわり
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