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欲しい答えはきっとそうじゃない。

夜遅くに殺し屋の男が帰宅するのは、よくあることだった。
・・・・・・だから、一人でこうして過ごすこともよくあること。

アパートの外は小雨が降っている。
部屋の隅が雨漏りしていることを昨日言ったが彼が修理できるとは思えないしこのボロアパートの管理人が呼んですぐに修理に現れるとも思えない。

少女は雨漏りしている箇所の下にお椀を置いた。とんとん、と同じ感覚で水音がする。
それを足を抱えて眺めていると底知れぬ不安を覚えた。

もしかしたら、ずっと彼はここへ戻ってこないのかもしれない。
もしかしたら、そこのドアから誰かが入ってきて私を殺すのかもしれない。
もしかしたら、雨が酷くなって一人沈んだアパートで水死するのかもしれない。
もしかしたら、いきなり苦しくなって倒れてしまかもしれない。

もしかたら、もしかしたら。

嫌な想像をとめてしまいたいのに次々と脈絡もない考えが浮かんでくる。
少女は耳を押さえた。


――ぎいい、と雨の音と共に彼がコートを濡らして帰ってきた。
「おかえり」

殺し屋は頷く。そして「まだ起きていたのか」と小さく呟きともとれる声で囁いた。
あたしの悩みも知らないで、と少し八つ当たりしたくなってコートをかける背中に言う。

「もし、あたしが一人でいるとき誰かに殺されたらどうする?」
「そんなことにはならない」
「もしもの話なんだけど」
「そんなことになったら相手を必ず探し出し殺す」
「殺しても戻らないのに?」
「それでも、俺は迷わずお前を殺した相手を殺す。そうすることでしか、お前の死を受け止めることできない・・・・・・」

それ以上、彼にこの話を続けるのは酷に思えた。
とんとん、と雨漏りの音がする。




沈黙を埋めるのは雨の音だけだ。

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