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人を害する理由とは。

殺し屋である青年は、珍しく傷を負っていた。
今日のターゲットは自分が狙われていることを知り、護衛を雇っていたのだ。
よくあることといえばよくあること。

だが、その護衛が結構、腕のたつ人物で拳銃の弾が腕をかすめた。かすめたくらいで貫通はしていない。浅手といえよう。
ターゲットはしとめたし、その護衛も結局はすみやかに殺すことができた。

いつもなら自分の失態に少なからず憂鬱になっただろう。
傷なんて負わない主義だ。
なるべく時間をかけずに目的のみを達成する。それが自分、だ。

だが、アパートに帰宅して血の流れる腕をみた少女がしてみせた表情のが気にかかった。
彼女は、目を見開いてから酷く無気力なものに変わったのだ。

失望なのか。彼女は無敵な殺し屋を理想とするのか。


少女が傷の手当をしてくれている。その金の長い睫毛を見ながら青年は居心地が悪い想いをしていた。包帯を巻く彼女が口を開いた。

「――仕事、変えられないよね」
「・・・・・・?」
「人を殺すのは楽しくないでしょ。傷も負うし」
「いつもは、こうじゃない」
「そうじゃなくて、あたし『独り』が結構いやなことに最近気付いたの」

少女が悲しげな顔になる。

「傷を負ったあなたを見たとき、あたし怖くなった。ああ、この人はすぐ消えるのかなって。放っておかれるのは、辛いことだったのね。気付かないフリをしてた」

彼女は強い自分を望んでいない。失望したのは今ある現実が簡単に消えてしまうかもしれないということに対してだ。
ささやかな幸せは、こんなにも脆い。

「ごめんな」

殺し屋は少女の頭を片腕で抱き寄せた。
金色の小さな頭は震えていた。

「・・・・・・どうして、人を殺さなくちゃならいの? どうして、あなたがしなくちゃならないの?」
「――ごめんな」

同じ言葉しか出てこない。
自分が人を殺す理由なんて大して無くて、それがとても苦しいことだと気付いた。
生活のためだからと強くいえない。
人を殺すことが好きだからともいえない。
これしか生きる術がないから・・・・・・違う。

じゃあ、なんなんだ。
この少女に対して「人を害する理由」をお前は答えることができるのか。


自問自答しても、少女のすすり泣く声を聞いても答えはみつからなかった。

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