写真は好きかい?

「写真は好きかい?」

転校生の山本がそう言うので俺は窓枠にひじをつけて「ああ」と軽く答えた。
こいつは転校してきてあまり周りに馴染めていない。それでも女子の受けがいいので、それにあやかろうとクラスメイトらはこいつと会話を試みようとする。
俺はどっちでもよかったが廊下で声をかけられ、なんとなく会話する。

「例えば旅行とか行って真っ先に携帯とかで撮ったりするのかな」
「するする。つい、こないだも加藤たちと釣りに行ったんだけどよ、みる?」


俺が赤い携帯をポケットから出してみても彼は首を振った。

「君は生きることに執着しているんだね」
「・・・・・・ん、なんて?」

もしかして電波なのか、そうなのか。
ちょっとパニックになる俺に彼は遠くを眺めながら言う。

「写真とかは生きた証になると思うんだ。だから、そういう生きた証を残すことにがんばる人たちは今の自分が結構好きで、生きていることに必死になんだと思う。僕はそうじゃない」

少し沈黙する。遠まわしに俺は嫌われているのか、などと考えていると山本はいきなりこちらに笑顔を向けてきた。
いきなりなので驚く。

「僕は逆なんだよ。逆。だから迷ったときは君、助けてくれよ」

手を差し出された。俺はなんとなく握り返す。

こいつは迷ってんのかなあ。
俺だって結構、漂流している感あるのにこいつは更に上をいっているとでもいうのか。
助けてやれることなんて、あるのか俺に。

「困らせたかな」
「あ、いや・・・・・・まあ、とりあえず写メとっとく?」



――こんな感じで俺と山本は社会人になっても酒を飲み交わす仲となる。



おわり。

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