少女、またの名を一縷の光

彼は殺し屋だった。

 どさり、と倒れる音。
 今回の対象者の男は、過去に人を殺している。暴力団組員であった彼は所持していた銃で違う派閥の人間と乱射騒ぎを起こした。その際に流れ弾にあたった女性がいた。彼女は妊婦であった。
 依頼人はその妊婦の夫である。

 だが、この男を殺したことによって特に何の感情も浮かばなかった。依頼人の無念が晴れてよかったなんて、思うはずがない。思うのは、ただ明日からの生活費が稼げたということくらいだ。
 無表情に死んだ男を眺めてその場を去ろうとしたとき。

 後ろで気配がした。振り向くと、そこには小柄な少女が立っていた。年齢は12、3歳くらいだろう。女性になる手前の曖昧な頃合の少女はあどけない顔をしているが、その表情は暗く、死体を見ても少し息をのんだだけであった。

「それ、あたしのパパなの」
「そうか」


沈黙がおりる。

「ねえ、あたしを連れてってくれないかな。別にあんたの好きにしていいからさ」

少女の台詞にどうして耳を傾けたのか。彼のルールとしては依頼された者以外殺さない、というものがある。だから少女に見られたからといって口封じはしない。
 しかし、いつもの殺し屋なら影にまぎれて夢のように消え去っていただろう。跡形もなく。
 そのときは、気まぐれだったのか会話をしてしまう。

「好きにしていいとは?」
「あたしを恋人にしてもいいしペットにしてもいいし子供にしてもいいし。とにかく養ってほしいの。それ、あたしのパパって言ったでしょ。養う人がいないと困るわ」
「そのパパを殺したやつでもいいのか」
「いいんじゃない。大して変わらないよ」

 少女が片手を差し出す。その手は妙になまめかしく月の光に照らされた。
 無言で手をとる。

 触れてしまってはいけなかった。
 その手は柔らかく殺し屋の硬い手によく馴染んだ。

スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

こんにちは。殺し屋と少女シリーズを先に読みにきてしまいました~
第一話はここであってるでしょうか?

殺し屋と少女(しかも曖昧な年頃の)って設定、凄くドキドキしました。
最近、リアル系や、いま自分が恋愛ものを書いているので恋愛ものばかり読んでいた所為でしょうか、ちょっとファンタジックな設定だと思いまして、そういうのが読みたくなりました。

話が逸れますが「少女」という言葉が登場したのは割りと近代で、「少女」たちはメディアが「少女」という言葉に押しつけた「儚げで少し不思議な雰囲気をもつもの」というイメージに踊らされてしまったらしいです。
何故こんな話を持ち出したかといいますと、私もまさにそういうイメージをこの言葉に抱いてしまう人間のひとりですので、この少女の普通とは違う感覚で喋るセリフに大変興味が沸きました。

殺し屋と12、3の少女と言えば、映画「レオン」が連想されますが、あれも大好きな映画です。

この物語の殺し屋の人物設定はまだ判りませんが、どんな風貌でいくつくらいの人物なのか、妄想を掻き立てながら(笑)また続きを読ませていただきにきますね!

Re: おはようです!

ブログはサワムラさんの言葉で早急に整理せねば!と思いました。ちょっとでも見やすくなったなら幸いです。
殺し屋と少女早速読んでいただきありがとうございます。
はい、第一話はここでOKです。続けるつもりはなかったのですが番号でもふればよかったですね。すいません、日付の古い順でお願いします。
殺し屋と少女は現代ではなく異世界設定です。ラノベ的な感じで書いてるつもりです。好きなシーンだけ書き散らしているだけですがまた読んでもいいという言葉、うれしく思います。続き書こう。
「少女」という言葉は近代で使われるようになったというのは知りませんでした。昔からある言葉のように好き勝手使っていますがメディアが生み出したようなものだったんですね。確かに私の中でも儚げ、少し不思議といったイメージはあります。子供でもないし女性でもない中間だからかもしれません。そういう意味では不思議な存在なのかも。儚い、は男性の願望のようなものかもしれないと思います(笑)芯は強いはずです。
この話でなぜ少女がなぜあんな口調なのかというと12、3歳という曖昧な設定の少女がどんな口調をしているのか私の中で曖昧だからです(爆)すいません、あと殺し屋自体の描写も増やします。
私の中では漠然とあるイメージを書いてないですね。「レオン」は私も好きな映画です!最後はかわいそうなんですが。どうしてこうなっただーといつも思ってしまいます。
それでは、いつも温かいコメントありがとうございます。こちらもまたお邪魔します~。
▲ページトップに戻る