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孕む

医者は私の大きく膨らんだお腹を見て「想像妊娠」だとした。
違う、私のお腹には確かに命が宿っている。

(お腹をさすりながらうっとりとつぶやく女)

想像妊娠とはガスがたまっているだけの空虚なもの。
私のは・・・そうね、“創造妊娠”とでもしておきましょうか。
たとえ、医学的に何も存在しないとしても私の愛がこの子に命を与えた。
きっと元気な子が生まれてくるに違いないわ。

(彼女は狂っているのか?)

楽しみねぇ。本当に楽しみ。
あの人は、どんな反応を示すかしら。
そんな馬鹿な、と怒るかしら。
泣いて産まないでと懇願するかしら。
それとも、ただ不思議そうに呆ける?
知らないフリをする?

嗚呼、楽しみ・・・楽しみっ!

(私と彼女は後ろを振り返る。ドアが開いて入ってきたのは一人の男性だった。
 彼がその、あの人だ。
 私は固唾をのんだ、あの人は彼女の恋人だったがちゃんと妻がおり彼女との関係は不倫だ)

なんなの、妙に静かな登場ね・・・ふんっ。内心はパニック状態でしょうけど。
そら、手が震えているわ。お腹に触れるのが怖いのね。

・・・?


なんなの、その笑みは。
何がそんなに嬉しいの?
身に覚えがないのに、子供が私の中にいるのよ?
まるで・・・父親のように、どうして・・・。


「ありがとう」

あの人はそう言ってから、もう一度、私のお腹に優しく触れて去っていった。
どうして、とも聞かず、怒らず、泣かず、馬鹿にしたように笑うのもなく、

ただ、微笑み、礼を言った。


(孕んだのは、もっと尊いものなのか)

私たちの間に既に愛はない。認められた女じゃないんだもの。
あの人にとって私は疎ましい存在のはずでしょ。
このお腹の中身だってそう、汚れたものなんでしょう?
本当の親のように顔をして、私ならまだしも、どうしてあの人が・・・。



――涙を流す女性。そして傍らには困り果てたように白衣の青年が佇んでいた。
精神科医である彼はあの人こそが彼女を罵り現実へ引き戻す鍵かと思っていた。

が。そうではなかった。
慈愛に満ちたあの眼差しが、

彼女を現実に戻したのだと認識する。

彼女が孕んだのは、子どものように何か純粋なものだった。
果たして、それは光にも似た・・・


“何か”だったのだろう。

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