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抜け殻の彼女の行方。

まるで彼女は心が悪魔にでもさらわれてしまったかのように、ゆらりゆらりと漂っている。

私は彼女と選択授業が一緒だった。
その授業の前後だけ話し、廊下ですれちがったとしても軽い笑みを交わす程度の友達。
だって、彼女は誰とだって話す。友達はたくさんいて私だけのものではないのだ。
私はただ、授業が一緒なだけ。

それだけなのに、心を失った笑わない彼女を見ていると心が苦しい。
みんな、彼女の心の行方を知らない。
どうしてそうなったのか理由を知らない。
けれど、親友だって知らないことを私は知っている。

授業中、彼を見る視線は輝いていたし、頬はピンク色に染まっていた。
テストだって彼女はそのクラスの中でいつも一番だった。
彼・・・・・・先生が好きだったから。

先生にはちょっと、どじなところがあって、プリントを忘れてきたり、授業の合間に気の強い女子たちに恋愛の話をせがまれ本当に困っていたり、寝癖をつけたまま授業したり、頭を中学生のようにかりかりとかいたり。
でも、そんな先生が先日、結婚することを嬉しそうに話していた。彼女の背中が固まっているのを席が後ろの私はじっと見ていた。
ちょっと、話すだけの彼女の機微をどうして知ったのか。

それは、私も先生が好きで本当は彼女をライバルと思っていたから。
ライバルが恋して美しく笑えば、私も笑顔を絶やさないよう努めた。
ライバルが恋して先生と二人きりで話しているのを見たら私も先生に挨拶だけがんばった。

けれど私には彼女ほどの積極性はなかった。だから彼女になら負けてもいいなと思っていた。
なのに、あっさり先生は私たちの全く知らない女性と結婚することになったらしい。
なんだか世の中不公平だなあと思う。
写真を見せろと授業の気の強い女子たちが言うので先生は照れたように携帯の写メを見せていた。
教卓に集まるみんな。
その中に、顔を真っ青にした彼女もまざっていた。
私も少なからずショックだったけど彼女が気になってそれどころではなかった。
携帯の中には、私たちとは違うOLっぽい年上の女性が映っていた。ちゃんと、大人だった。

みんな、彼女を最初は心配していた。けれど、理由を言わないし笑わない虚ろな彼女に誰もよりつかなくなった。孤立していく彼女。
私は理由を知っている。

でも、私だって彼女から聞いたわけじゃない。失恋が彼女をああさせたことをはあくまで推測に過ぎないのだ。

私の想いは本当に表面上のものだったらしい。黒い服の集団の中を漂うクラゲのように漂う彼女ばかり目で追っている。先生の授業中、緊張することはなくなった。
先生は、先生で幸せになってほしい。
でも、違う世界の住人のように興味を失せてしまった。それほどのものだった私に比べて彼女の状態は本気だったという恋を証明している。

いつ、私は声をかけよう。


大丈夫。

あなたが笑わないだけで、波紋が広がるほどなのだから、
あなたを見ていた人はきっと、いる。
私もその中のひとりだよ。


授業が終わったあと、彼女は笑って窓から空を眺めた。
「いい天気ね、なんかすかっとするよ」
明るい笑顔に私もライバルだからとか忘れてつられて元気になった。

あの気持ちいい天気の日に戻れるよね。



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