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彼女を好きな理由

20090524193134


「なんか一回見ただけじゃ覚えにくい顔ってあるだろう?」
「あるある」

私はオレンジジュースをストローでじゅーと、すする。
彼はハンバーガーを口いっぱい頬張りながら私が話に食いついていないのに尚もべらべらと語る。

「目とかは大きくなくて、そうだなホクロとかはまず顔とかにはないな。んで染めてもない黒髪は少しはねている程度。元気すぎるはねっ毛だと印象に残るものな。めがねとかそういうのもなくて、唇は標準。厚くも薄くもなく色は適度に口紅を塗っているだろう」
「女と過程して話しているのね」

私は適当に頷きながら、はたと気付く。

「それって私のことかしら」
「ああ、そうかも。お前は一度見ただけじゃ覚えられない顔だ」
「・・・・・・」
こいつは私の彼氏だ。
そんな全く覚えにくい何の特徴もない私と、どうして付き合っているのだろうか。

付き合おうと言い出したのは相手だから、私は理由など聞かされていない。
彼はまたハンバーガーを口いっぱい嬉しそうに頬張る。
私が悩んでいるというのになんと幸せそうな。

「顔じゃないよ」
「え?」

頬張りながら片手にコーヒーを掴む。彼はジュジュッとストローで吸う。黒い液体が上へと上がっていくのを眺める。

「性格とか顔とか普通だよな。けど、いいなと思った理由はあれだよ、あれ」
「あれとは」

顔を近づける。彼は大真面目な顔になっている。私は生つばを飲み込んだ。

「運命的なカン?」
「・・・・・・・ごめん。顔が理由の方がなんぼかマシなんだけど」

やっぱりいまいち彼がどうして私と付き合っているのか、わからない。
きっとこれから消去法で理由が現れていくのだろう。とりあえず顔や性格ではなかったということだ。

私はため息をついて空を見上げる。






空を見上げる、彼女の横顔を俺は盗み見る。
きっと内心呆れているに違いない。
・・・・・・わかっていないな、と思う。

彼女が好きな理由はもちろん顔じゃない。性格じゃない。雰囲気でもない。共通の趣味があったわけでもないし、身体なわけがないし、お金目当てとかもちろん違うし、実は運命的なカンを感じたわけでもなかったりする。

人が人を好きなるには理由なんてない。
だから、俺には全く彼女が好きな理由が思いつかない。
でも好きになってしまったのだからしょうがない。

理由がないほど好きだから彼女の顔も声も性格もブタグッズを集める趣味も好きだ。
わかってないんだろうなあ、彼女は。

「何、にやにやしてんのよ。わかんない奴ね」
「いや、別に」

好きな所はきっと幾つもこれから見つかるだろう。
ただ、矛盾していることに、それらは彼女を好きな理由ではない。
最初に好きになって後に理由は付いてくるものなのだ。

きっとこれから幾つも彼女を好きな理由候補が増えていくのだろう。






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