この世はつまらないことばかり、でもない。

「この世界は・・・・・・実際、つまらないわ」

茶色に染めた髪を耳にかきあげながら彼女が言った一言に僕は、嘆息を交えて答える。

「君がそう思えば、途端に世界は色あせる。主観を捨ててみればそう捨てたものじゃないさ」

「客観的に見てもあまり大層なもんじゃないわよ。戦争とかあるし、病気あるし・・・・・・つまらない、あんたと押し問答するしかないし」

「僕は別段、この会話がつまらないと思わないけどね。君は戦争や病気など人に害する出来事があるから、つまらないと称すのか? だったら結構な偽善者だね。世界の行く末を憂えているのか」

「違うわよ。あきれているの、見放しているの。くだらない世の中だと」

「君には直接、関与しないことがらばかりだろ。逆に僕は世の中は平和ではないから、つまらないどころか酷く変化に富んでいると思うけど」

「・・・・・・」

彼女はつまらなさそうに目を細めて、口をつぐんだ。
そして、おもむろに煙草に火をつけて口にくわえる。
紫煙をくゆらせる彼女を眺めて僕は微笑んだ。




「君を見ていると僕は退屈しないですむよ」


出会うまで、僕も世界はつまらないと感じていたのに彼女に会ってから毎日少し楽しい。
彼女も僕と居て楽しい、と思って欲しいと願うのは・・・・・・つまらないことだろうか。


僕は煙草を吸う彼女の背に近づいた。
後ろから抱きしめる。
彼女は少しばかり驚いたようだ。体がびくっとしてから煙草が指からコンクリートの地面に落ちた。

「・・・・・・つまらないこと、しないでくれるっ」
「君の言う『つまらない』って範囲広すぎるよね」

笑って更に強く抱きしめてやった。





おわり。
スポンサーサイト
▲ページトップに戻る