スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

殺風景な荒野

ひび割れた大地。
灰色の空からは太陽は見えない。
そこにはそれぞれが、ある程度の距離をとって幾人かが、ただ立っている。

立っている人々は現実では考えられないほど大きかったり、逆に物語に出てくる小人のように小さいものもいた。

私は砂を巻き上げて、地面を蹴ると、とある女性のもとへ走る。
つんけんとした神経質そうな、その女性の前に立つと私は両手で銃を構える。
迷いなどはなく引き金をひくと女性は悲鳴をあげて倒れこんだ。

―――

「何度も言ったことでしょう、あなたはどうしてそんなミスばかりおこしてしまうの?」
ヒステリックに喚く上司である目の前の女性は私の心象世界である荒野でもう1264回目の死を遂げた。
頭を垂れて謝り私はデスクにつく。
すると、今付き合っている彼からのメールが入った。
内容を即座に確認してみると、デートの断りであった。

―――

銃を彼に向かって構える私。私の中で彼を占める割合は大きく彼はまるで巨人のようであった。不適に微笑む彼。こんな小さな銃では致命傷にはならない。
それでも私は彼に向かって銃しか向けないでいるのは私が彼を好きすぎているからだ。

と、そこへ後輩の女の子がやってきた。
彼女は必死にバズーカをすすめる。

―――

「先輩、あの男はほんと二股かけてるんすよ。てか先輩のこと付き合っていると思ってないと思う! 基本、メール食事軽いデートは女の子とは空気をするかのようにできちゃう野郎なんすよ」
私は言われてメールで追求してみることにした。

この前もデートを断ってきたけど、どうして他に用事でもあるの、と。
ちょっとして返信がきた。
ごめん、ごめん。埋め合わせはするから、となんだか謝る感じの顔文字が軽いノリでついてた。

―――

私はためらもなくバズーカを構える。衝撃を足でこらえて放った一撃は彼の左胸を直撃。
巨大な彼はひるんで片足をつく。
しかし、すぐにまた微笑んで立ち上がる。
そして、私に向かって彼の手が伸びてきた。私は彼に両手で捕まえられた。まるで人形のようなサイズになる私は苦しげにうめく。
それを楽しそうに眺める彼。

―――

昼休み。食堂で後輩の話に相槌を打ちながらも彼に囚われていることを自覚する。
「てか、先輩その太股の傷どうしたんすか!」
スカートから少し覗いてしまった太股の傷。
慌てて隠す。
「愛の証かしら。少し悪戯が過ぎただけよ。大丈夫、私はきっとあの人のおまけじゃない。だって傷つけたいほどの束縛を受けているのよ」
「違うっす、虐待っすよ、それ! 先輩勘違いっす!!」
「そうだ、勘違いだ」
話に割って入ったのは上司の男だった。
上司と言っても二年くらい上の中間管理職の男だ。
「何がですか」
多少、むっとしながら男を睨む。
「いいか、逃げても無駄なことだってある。その男と今ここで話を付けろ。すぐに別れるんだ。で文句を垂れたなら俺に代われ、いいな」
「あなたには関係ないでしょ? プライベートなことです」
「お前が私情を絡ませないようにするためだ。そんな傷をもって暗い顔で仕事されちゃあ周りが叶わない、電話を貸せ」
「あっ!」

私のポケットの携帯が男にとられた。男は私に押付ける。有無を言わせないその態度に私はしぶしぶかけてみることにした。

―――

捕まれたままだった私は第三者による攻撃によってひるんだ彼の手から逃れることができた。

すぐさま、第三者・・・上司の男は私に剣を持ってきた。銃なんかではなく直接手を下せということだ。
私は剣の柄を握り締め駆け出す。
そして見事な跳躍をして彼を肩から斜めにざっくり斬った。

やった、と思った。
けれど傷など無く彼は少しイラついた顔をして体勢を整える。

―――

「もしもし? 何俺の声が聞きたくなったのか」
「ううん。ただ、私たち別れたほうがいいって周りに言われて・・・」
「周りのことなんか気にすんな。デートなんか何回でもしてやるよ。ただ酒に酔ったときはごめんな。手がたまに俺でちゃうもんな・・・でも愛してるから、な」
「うん・・・でも、あのさあ・・・」
「なんだよ、俺忙しいから後でじゃ、駄目か?」

私の手から携帯が上司にとられる。
男は真面目な顔をして言った。

「いいか、よく聞け。お前は今ここで振られたんだ! これ以上彼女には近づくなっ俺が許さんぞ。仕事に支障が出て困るからな・・・! ていうか俺が彼女をもらう、以上!」

顔が赤いまま携帯を私に返す男。
この上司の男とは仕事のことしか話したことがない。
なのにどうして私なんかを?

―――

気付けば上司の男は彼を素手で殴っていた。
「いいか、素手で直接が一番だ。男を相手にするときはストレートに行け。嫌いなら嫌い、好きなら好き。男は馬鹿だから、このくらいじゃないとわからん生き物だからな」

彼は小さくしぼんでいき消えてしまった。
その代わり上司の男はひとまわり大きくなった。

―――

「じゃあ、好きです」
私の脈絡のない言葉に後輩と上司の男はぽかんとなる。
「あのなあ、じゃあ、ってなんだ。じゃあって」
「先輩ついで感満載っす」

いけない。心象世界の話の続きを口に出してしまった。
しばらくは彼が心で巨人となって私の世界を牛耳ることになるだろう。

いつかは荒野に花も咲くのかもしれない。




スポンサーサイト
▲ページトップに戻る

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。