世間には残念な女子がたくさんいるけど関わるのはごめんだ【備忘録】

「世間には残念な女子はたくさんいるけど関わるのはごめんだ」

キャラ忘れかけてきたからここに記して見返すようにしたいと思います。

【ストーリー】

恋愛することができない主人公・成瀬博人が同じく恋できない美人、八千草紅子に無理やり恋愛相談部なるものに入らせられて残念な女子(ときに男子)とかかわっていくお話。

【キャラ】

☆成瀬博人(なるせひろと)
僕。主人公。三人の姉がいて女の子に夢をみなくなった。中学時代のツイッターアカウントはナルト大橋。

★八千草紅子(やちぐさべにこ)
あたし。恋愛相談部創設者。尊敬していた兄がホモだったことをショックに恋愛できなくなった美人。
他校に喧嘩うったり、色々な部活の助っ人に入ったり、派手な毎日を送る。

☆枕崎修平(まくらざきしゅうへい)

最初の相談依頼者。チャラ男。山田が好き。

★山田紀子(やまだのりこ)

眼鏡図書委員。胸でかい。塚本花桜梨のことが中学時代好きだった。今は枕崎と付き合っている。
塚本花桜梨と九鬼音華(くきねはな)がくっついた原因を作った成瀬を嫌っている。

★望月真奈美(もちづきまなみ)

体育系ギャル。クラスの派閥の女ボス。女子バレーボール部の部長。名前だけしかでてない。

★常盤真凛(ときわまりん)

ショートカットがかわいい年下女子。成瀬の私物コレクター。自称成瀬の彼女。たぶん変態。



「他校の女子校白百合女学院の残念な知り合い」

★塚本花桜梨(つかもとかおり)

中学時代に成瀬とツイッター上仲が良かった。九鬼音が奪った。ツイッターアカウントはツカオン。

★九鬼音華(くきねはな)

本編で名前出すの忘れていた女の子。顔色悪いけど現在、塚本花桜梨の彼氏(彼女?)



★は関わりたくない系女子。☆は男子。こう見ると女子多い。



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世間には残念な女子がたくさんいるけど関わるのはごめんだ その10

白百合女子学園に遠征(?)に行ったその日の翌日。

なんだか登下校中、みんながみんな、僕を見ているようで、嫌な感じがしたのだけど教室に入って、その答えがわかった。
黒板に僕と八千草の名前が相合傘の中に書き込まれている。
つまり、そういうことだ。
だから、二人で授業をさぼるとかしたくなかったんだよなー。
八千草といると、どうしても目立つ。

そこへ、タイミング悪いことにもう一人の当事者、相手役とされると八千草が黒髪をなびかせて登校してきた。
ちらりと黒板を見てから僕の前に立つ。
噂のツーショットにみんな、浮足立った。注目される中、彼女が言ったのは。

「やったあ、成瀬! これで恋愛相談部の宣伝になるわね!」
「お前すごいな。思春期のガラスのハートしてないな。もはや鋼の錬金術師だな」
「よっしゃ、この調子で目立つのよ。そして依頼殺到して、みんなの依頼を聞いて――」

そこまで、にこにこと言っていた八千草が、その笑顔のまま固まる。

「ところで、そもそもの発端はあたしとあんたが恋愛できなくて、他人の恋愛を参考にするために立ち上げた部だったよね。違う?」
「いや、そういう流れで立ち上がった部だったのか。はるか遠い昔のことで忘れていた」
「どうも、今の方向だと恋愛できる自信がないのよね。あんたと相合傘に名前入っても、全くときめかないのよ」
「ほうほう」
「たぶん、今この場であんたが『好きだ!』って叫んでも、心に響かない自信はあるのよ」
「ほうほう?」
「好きだ、って告白して、あたしを抱きしめてキスしても無表情でいられる自身もあるのよ。いや、手は出ると思うけどね。殴ると思うけどね。キックは繰り出すわ、血の雨が降ると思うけどね」
「もはや、僕のことが嫌いとしか言いようがないな」

暗い結論に達する。
二人して「はあ」とため息をこぼす。クラスのみんなも、どうやら熱い雰囲気とか「もう茶化さないでよ!」といった甘酸っぱい青春の雰囲気を感じられないようだと悟ったのか、雑談に戻っていった。

「恋がしたいなー」
「お前は、この期に及んで恋したかったのか」
「あ、成瀬。白髪」

八千草が素早い動きで僕の白髪を引っこ抜いた。どうして白髪って色素全くないくせに抜くとき、ものすごい根っこ張っていたかのように痛いのだろう。人体の不思議だ。

「八千草のおかげで苦労しまくりだからな。白髪も増えるわ」
「ストレスと白髪の因果関係は証明されていないわよ。ワカメ食べろ」

八千草がぽい、と白髪を教室に放ろとしたときだ。
高い声がその動きをとめさせる。

頬を蒸気させて言った彼女は知らない子だった。恋愛相談部とやらに来た子なのだろうか。
爽やかな短めの黒髪ショートカット。細い体。ギャルでも委員長キャラでもない、スカート丈。黒のハイソックス。
少し丸みを帯びた顔つきは幼く見える。
かわいい部類に入ると思うけど、一生懸命に訴える台詞がそれか。
にしても、なぜに白髪を捨ててはいけないのか。

「それ、あたしにください。成瀬先輩の白髪!」
「いいけど、使用用途を説明してちょうだい」
「なんで、お前がエラそうにするんだ。元は僕の白髪なのに……って僕もえばる必要はないんだが」

その女の子は恥じらうように言った。なんで恥じらうように言うのだ。僕も恥ずかしくなってくるわ。
「そ、それは言えません」
「言えないことに使うわけ?」
尚も八千草の尋問は続く。こいつ、たぶん後輩を苛めて楽しんでいるな。
もう、いいじゃないか、白髪くらいたくさんあるから直に抜きなさいと言おうとしたときだ。

彼女が意を決したように言い放った。

「わ、わたしは成瀬先輩のファンなんです。成瀬先輩のものなら、なんでも欲しいんです! たとえ白髪でも、使用済みティッシュでも、もう味のしない噛んだ後のガムでも、バスのチケットでも、なんでもです! 今、言った白髪以外のものはすでに持っています! なので、それが手に入ればコレクションが増えます!」
「よし、気に入ったあああ、もってけドロボー!!」
「待て待て待て待てえい!」

今、おかしいだろ。白髪はここにあるとして他のをすでに持っているとか、おかしいだろ。なに、彼女も残念な女子系? ストーカーということか?

「僕に付きまとって何か得があるのか……?」
「いいじゃない、成瀬ー減るもんじゃなしー。はい、これあげるわ」
「やった、ありがとうございます!」
「いいってことよ」

目の前でストレスの具現化(白髪は絶対ストレスと関係していると思う)が譲渡される。
嬉しそうに飛び跳ねる彼女はかわいいと思う。それが白髪に喜んでいなければ。

「ところで八千草先輩と成瀬先輩は付き合っているんですか?」
『いや、完全否定でお願いします』

なぜか二人の声がそろってしまう。目をぱちくりと瞬く彼女。彼女はまた晴れやかな顔になった。

「よかった。じゃあ、まだ望みはありますね。あたしの名前は常盤真凛(ときわまりん)と言います」
「真凛とか、今はやりのキラネームってやつじゃないの」
「お前も微妙な名前だと思うがな」

僕のツッコミは華麗に無視。その真凛が「でも、ちょっと残念かな」と言った。

何がだ。

「あたしが今一番欲しいのは成瀬先輩が肉体関係を持ったあとの使用済み避妊器具が欲しかったんです。相手はあたしじゃなくてもいいので」
「そうか、それは残念ね。あたしが彼女じゃなくて。あなたが使えばいいんじゃない、これから」
「まだ、彼女と決まったわけじゃあ――」

きゃっ、きゃっと話す二人。
僕は絶句したまま動けずにいた。事態の急変についていけてない。
こいつは、近年まれにみるほどの『残念な女子』だぞ。八千草だけでも関わりたくないと思っているのに、この子と彼氏彼女になったら、なんか恐ろしいことになりそうだ。

それなら、まだ八千草の方がマシだ。
あ、そうだ。


「すまない、マリリン。僕は紅子のことが好きなんだ」
「うそこけ、三枚おろしにすっぞ。マリリンって誰が呼んでいいって言った。今日から成瀬はあたしの下僕じゃ」
「なるほど、成瀬の下僕キャラが好きなのね」

常盤真凛がすごい形相で凄んで見せた。
八千草の冷静な分析がどこから遠くから聞こえてくるが全く反応できない。

ほらな、これはやばくなってきたぞ。


つづく?




世間には残念な女子がたくさんいるけど関わるのはごめんだ その9

白百合女学院は、本当に女子校だった。
女子校に嘘も本当もないが、女子校だった。
その証拠に教員以外で高校男児を間近で見るのが珍しいのか、八千草の後ろを歩く僕は「好奇の視線」による集中業火を浴びていた。
視線が痛い、とはこのことだ。
今だけ、女子になりたい。

こんな想いまでして女子校に乗り込んだ理由を僕は思い出す。
確か、恋愛相談部とやらに巻き込まれて――これは戻りすぎか。ともあれ、それの依頼者である枕崎というチャらい奴が山田紀子という文学系女子にラブレターを渡して告白した。
そこまではいい。
だが、山田紀子の返事とやらが、この僕を指差して「こいつと友人なら付き合えない」と、おっしゃって。
その理由というのが、昔に僕がツイッターしていた頃にフォローしていたツカオンに酷い仕打ちをしたとかで、山田紀子は親友を傷つけたお前を許さないとのことらしい。
ツイッター上のごたごたが、まさかリアルに反映するとは思わなかった。しかも中学時代の話だ。

人生、長いこと生きていると何が起きるかは、わからないなあー……まだ若いけど。
ともあれ、紆余曲折を経て、僕はここにいる。

八千草は山田紀子から聞いていたクラスの前まで来たのを確認して、息を吸った。

「たーのーもおおおおおお!!」

やっぱり、その道場破りのような教室の尋ね方なのか。八千草は躊躇なく教室に入った。
僕も気まずいが、その後ろについて入る。
教室で談笑している女子たちが一瞬にして、こちらに向いた。
山田紀子のときも、こんなだったけど、どうして八千草は平気なのだろう。
……きっと兵器なのだろう。

ツカオンは、僕に過剰な感情を寄せていたため、顔写真を他人に送られたことにより「よそよそしくなった」と勘違いしたことから、疎遠になってしまったネット上の友人だ。
ツカオンの写真は山田紀子から、もらった。
僕は恋愛できない体質だから、好みも何もないが、世間的に「かわいい」部類ではない顔だった。
ちょっと暗そうな顔色の悪い女子だった。笑って血色良くしたら、わからないけど。

「ツカオンは、あなたね?」
写真の少女は、他の友人と一緒にいた。八千草がびしい、と指を指す。
ツカオンは机に座って、そのまわりにいる女子が目つきを鋭くした。

僕は覚悟を決めて、前に出た。

「ツカオン、僕は君と昔、ツイッターをしていた“ナルト大橋”だよ。あのときは勝手に縁を切ってすまなかった」
「ぶっ」
八千草はいきなり噴出した。
アカウント名は言いたくなかった。
成瀬博人だから、ナルトで良かったが、ナルトはすでに居たので大橋を付けたのだ。ナルトにこだわらなくても良かったが中学生の頃は絶対に使いたかったのだ。
某アニメが好きだったような気がする。

ところが、ツカオンの反応は薄い。それよりも周りにいた女子の一人が驚いた様子だった。

「あ……、あなたがナルト大橋? え、なんで男なの?」
「は?」

目の大きい、厚い唇をした美人が僕を見た。
派手な顔をした彼女は巻き毛を胸元まで垂らしており、スカートは絶妙な短さで調整されており、香水がふんわりと香ってくる。威圧的な女子高生だった。八千草とは違うタイプの美人だ。
ギャル系の彼女は、僕に詰め寄った。

「ごめん、ツカオンは私なの。塚本花桜梨(つかもとかおり)。写真は私の彼の物なの」
「えーっと?? ツカオンは君なんだな。でも、今、台詞に誤りがなかったか? 写真は彼ではなく彼女だったが」
「ううん。間違ってない。まあ『私の彼女』の方がヨリ正しいかなあ」
「つまり、カップルってわけね! いいじゃん!」

僕よりも数段、理解力が高い八千草が嬉しそうに言った。
重々しくため息をつく。
「女子校ってのは、そういうことがあり得るのはファンタジーだと思っていた。友情より1.5倍増しにしただけじゃないのか?」
「100倍100倍☆ ねー!」
「ねー」
顔色の悪いツカオン……ではなく、彼氏である女子が棒読みで頷いた。
山田紀子は親友だったはずだから、女の子であることを知っていたはずだ。まさか、ハメられた?

「どうして、他人の写真を送ったの?」
八千草が問う。すると、彼(女子だけど)が小さな声で言った。

「私の顔は正直、男子受けはしません。女子受けはしますが。塚本と私は当時、付き合う前で、ただの友人同士でした。塚本は彼氏募集中でネット上で探していたところで、あなたと意気投合。でも、自分に付き合うに足るかどうか、判断しかねたのです。そこで、友人である私は写真を送ってみるといいと提案しました」
「だってー私の顔はー絶対、即会おうってなるんだもん」

塚本の台詞に僕はうなづけない。僕は美人であっても好きにならない自信がある。
八千草にどきっ、とする瞬間がまったくないのだから、塚本花桜梨でも平気なはずだ。
断じて不能ではないぞ?


「あまり好ましくない顔の女子と会ってもいい、付き合ってもいいと言ってくれるならそれは本物ではないでしょうか。けれど、私の意図はそこにはありません。私は塚本と誰とも付き合って欲しくなかった。ナルト大橋がツイッターから消えて小躍りしましたよ……がっかりしていた塚本に私は告白しました」
「それで付き合うことにしたのよ、ねー!」
「ねー」
「ねー、じゃねえ! つまり僕は謝る必要まったくナッシングだよな!? どうして、ここまで来て公衆の面前で過去の黒歴史をほじくり返してナルト大橋を馬鹿にされなきゃならないんだ!?」

ついに僕は切れた。びっくりして目を見開く彼女たち。
すると、クラスにいた女子たちが一気にほえたてた。

「ベストカップル誕生に貢献できたんだからいいじゃんかよー!」
「お前は二人のことをまったく知らないくせにー!」
「そうだ、そうだー!」

最後は八千草まで加わっている。お前はどっちの味方だ。

「山田紀子はどうして、終わったことをほじくり返すために、嘘をついたんだ。カップル誕生したなら僕は許されるはずだ」
「成瀬が嫌いだったんじゃないの。なんか、ヘボイところとか」
「どういう意味だ」

八千草は根本的に僕のことを嫌っているんじゃないか。最近、そう感じる。

「山田紀子って、あの山田さんかな」
塚本花桜梨が唇に指をたてて思い出すような仕草をした。塚本の彼女がうなづいた。

「君は……山田紀子には恨まれているんじゃないかな。なんだって中学時代に山田は私に恋をしていたようだ。告白されたこともある。塚本と私がくっつく理由を与えた君に逆恨みしているのかもしれない」
「は?!」

僕はもう何が何だか信じられなくなっていた。今の彼氏彼女の事情話にはすべて女しか出てきていないのだからな。

「まあ、すべて成瀬が悪いってことで一件落着じゃない?」
八千草が軽く言った一言に「そうよ、そうよ」と同意の言葉があちこちに上がる。

たぶん……つうか、きっと、こいつは僕のことが嫌いなんだな。もう決定だな。
僕は遠い目をして教室に入ってきた人と目があった。
女教師だった。

「はいはいー授業始めるわよー」
座り始める女子たち。僕と八千草は、一礼して教室を後にした(冷静に)後ろから先生が「ちょ、待って今のかわいい女の子誰!? モデル!?」とか言い出したので八千草は、

「捕まえてごらんなさああああい!」
と言って廊下を疾走しだした。



早く、帰ろうよ。




つづく?

世間には残念な女子がたくさんいるけど関わるのはごめんだ その8

チャイム鳴って、次の授業が始まっているであろうときに、僕と八千草は駅のホームに立っていた。
授業が残っているが、ツカオンに何故か早急に謝らなくちゃいけないとかで二人して学校を抜け出したというわけだ。
「完全にさぼってしまった……いたって真面目な生徒であるこの僕が……」
かろうじてコートと財布は持ってきた。
しかし、八千草は早業で鞄とマフラーを装備していた。
彼女はこのままいつだって家に帰れるというわけだ。僕はいったん、鞄を引き取りに学校へ戻らないといけないが。
その際、どんな顔をして戻ればいいのかわからないが。

「人生にはケジメってやつが必要なのよ」
「あ?」
電車が来た。乗り込みながら僕は先生にどんな言い訳をしようかなと考えを巡らせていた。
八千草は椅子に座って長い脚を組んだ。サラリーマン風の親父が横目でちらと見た。
「あんたは、なあなあで終わって別に今まで忘れていたかもしれないけど、そのツカオンは次の恋愛に進めないでいるかもしれないでしょう。終わるなら終わる、誤解もあるかもしれないしね」
「誤解も何も、もともと付き合うつもりはなかった。友達でよかったと言っただろ」
「男女の友情は有り得ない」
「僕たちはどうなる」
「友達なの、私たち?」
「…………」
まあ、そうだな。僕たちは部活仲間なだけであって別に友情なんてないに等しい。
じゃあなんで、友達でもない奴と一緒に学校さぼってんだろ。
「とにかく、ツカオンに謝ってしまうのよ。あんたも次に進めないでしょ」
「別に恋愛しないのはツカオンのことがあってではないけど」
「けど、お姉さんたちに続き、そのツイッターの件があってから女性が怖くなったのは事実でしょ」
「まあ、そうなのか?」
「女性恐怖症に拍車がかかったのはそのせいよ」
「いや、女性恐怖症ではない」
「じゃあ、なんだっていうの。ゲイなの」
「それも違う」

不毛な会話をしているとツカオンの学校の駅に着いた。
ツカオンは山田紀子によると別の高校にいるとのことだ。
駅で順路を聞き、僕と八千草はてくてくと歩いていく。駅から坂を上ったところにその高校はあった。

「げ。まさか――」
「女子校なの?」

広い間口のその高校の門構えには『白百合女学院』と記されていた。

山田さんはあまり事細かに説明してくれなかった。
女子校とは思っておらず、僕はひるんだ。
しかし、八千草はひるまずにそのまま入っていく。
「おい、勝手に入れないだろ」
「いいの、うちの高校の新聞部でおたくの高校の新聞部と交流することになっていました。よろしくとでも言っておけばいいのよ」
「それ通じるのか?」
「他校に喧嘩売りにいったときに結構、有効だったわ。わりとそういうのあるみたいよ、実際」
「伝説が多いよな、八千草は……」

彼女の後ろについていくという形で僕もついていく。
女子校には初めて足を踏み入れる。
しかし、女の子に興味がない僕は何か恐ろしいことがおきるのではないかとか、そんな不安しかなかった。

む。女性恐怖症ではないはずだ、断じて。



つづく。

世間には残念な女子がたくさんいるけど関わるのはごめんだ その7

「たのもおおおおおっっっ……!!」

まさに道場破りかと言わんばかりの声で八千草が4組のドアを勢いよく開けた。
教室は一瞬、静寂に包まれた。

僕は思いきっり他人のフリをしたかったが、八千草が「成瀬そこで突っ立てないで協力して枕崎をフォローするのよ」と声かけてきたので仕方なく無言で教室に入る。

枕埼は半泣きになりながら「もうマジ勘弁、マジ勘弁」とか言っている。
そうだな。直接声かけにいく勇気あったら恋愛相談なんぞ持ち込まないわな。
そんな枕崎に八千草は舌打ちしてから、逃げ出そうとする彼の背中に蹴りをいれた。

床に転がる枕崎。その目の前には席に座って友人とおしゃべりしていた山田紀子がいた。
なんだ、これ新手のいじめなのか?
すまない、枕埼……僕にはどうすることもできない。

枕崎は下から山田紀子を見上げた。
そして意を決したのかすくっと立ち上がり一礼した。

「3組の枕崎修平と申します! 先日、あなたにラブレターを送ったものです。今日は……その返事をいただきに参りましたあっ!」
顔を真っ赤にさせて大声で叫ぶ枕埼。チャらい男だと思ったが決めるときは決めてくれる。
その公衆の面前での愛の告白に教室中が浮き足だった。
「きゃああああああ!」
「マジで? え、マジで!?」
「枕崎って山田のこと好きだったの?」
「あわなくね? でもいいじゃん!」
「返事は? 何、返事は?」

その騒ぎに他のクラスからも観客が押し寄せてきた。携帯で写メールを撮るやつまで現れた。
なんなんだ、このお祭り騒ぎは。
八千草は腕をくんで事のなりゆきを見守っている。
山田紀子が口を開いた。メガネがきらりと光った。

「ひとつ、お尋ねいたします」
「なっ、なんでしょう!」

すると山田紀子はなぜか僕を指差した。教室中の視線が僕に集中した。
なんだ?

「あなたはこの方と友達なんですか?」
『はっ!?』

いきなりの質問にみんな同じように聞き返した。僕もなぜ彼女がそんなことを聞くのか疑問に思った。
枕崎が不安そうに尋ねた。
「と、友達じゃないけど、まさかこいつのことが好きとか……言わないよな?」
「いいえ、違います。むしろその逆です。私はこの男のことが大嫌いなんです。もしこの方とあなたが友達ならお付き合いすることはできません」
「やったー! まったくこんな恋愛不感症男と友達でもなんでもない明るい青年だから付き合っても大丈夫よ! よかったわね、枕崎っ!」
「あざーっす、あざーっすっ……!!」
「待て待て待て待て待て待て待て待ていっ!」
勝手にばんざーいを始めている八千草と枕崎。
今、とっても聞き捨てならないことをあまり関わりのない山田紀子に言われた僕は全くもって無視できないぞ。
僕は山田紀子の机に両手を置いた。

「どうして僕がそんなに大嫌いなんだ。一応理由を聞かせてもらおうか」
「自分の胸に聞いてみればいいでしょう」
「わからないから聞いている」
「仕方ありません。ヒントは中学生の頃の話です」
「? 中学生の頃? 君とはあったこともない」
「私じゃありません……ツカオンに聞き覚えは?」
「ツカオン……、あっ……!」
「私はそのツカオンとは親友なんです」
僕は青ざめた。
世間は狭いぞ。やばい、彼女が彼女の親友だと……?
山田と僕の間で妙な空気が流れた。背中にどっと嫌な汗が吹き出し始めた。
教室中がしん、となった頃に八千草が笑顔で割って入った。

「何何、楽しそうな話ね。わたしもまぜてー!」
僕の黒歴史は放っておいてほしい。
無視をする。
「よかったなー枕崎、末永く彼女と達者でな! さて、僕は教室に帰ろうかな」
「わたしもその話をく・わ・し・く聞かせてほしいなー成瀬くーん」
「あ。3時間目はあれだ、移動教室だ。早く準備して行かないと遅刻するな……」
「とっとと、話せやあああああっ!」
「うごおおっ!?」

八千草の綺麗な右ストレートが頬に炸裂。大げさじゃなくて一瞬、視界がブラックアウトした。
しゃれにしていいパンチとそうでないパンチを彼女はわかっていない。
僕は頬を抑えながら言った。
「あれは、僕が中学生の頃の話です」

教室中が注目したままなので僕は咳払いをひとつした。
「場所を移さないか?」
「ここで話せ今すぐ話せ」
「本当にここで公開するんですか、そうですか――」

どんないじめ? 八千草紅子はいじめを許さないタイプじゃないのか?
仕方ない。僕も勇気を出して黒歴史を告白することにした。

「僕は中学生の頃にツイッターにはまっておりました。主に映画のことや日常のことを呟いていたのですがとあるアカウントの人と仲良くなりました。
最初は男性と思っていたのですが、ほらネットって性別わからないだろ。だから親しく交流していたのですが僕は純粋に友達として彼女は……ツカオンという方はどうやら僕に恋愛感情を抱いていたようなんです。
けど、実際に会おうとは思っておりませんでした。
僕としてはちょっと映画の話をネット上でできたらそれでよかったんですね。ツカオンの背景など知りません。
そんなあるとき、僕のツイッター上のメールフォルダに知らない人からメールが来たんです。
メールには『始めまして。私は親切心からあなたにメールいたしました。あなたが交流しているツカオンですが、注意してください。学校では根暗な奴で全くもってあなたにふさわしくないドブスです』とありました。そのメールには隠し撮りしたと思われる写真が添付されており、確かにあまりかわいくなかった。
でも、だからといって僕は彼女との交流を絶つつもりはなかった。趣味の話は楽しかったからです。
そんな折に彼女から『私の写真を心無い誰かが送ってしまったようです。だから最近のあなたはよそよそしいんですか』とか『どうして会ってくれないんですか』『やっぱり顔が大事なんですね』などと僕を責めるような呟きが送られてくるようになった。
彼女はどうやら巨大な被害妄想にとらわれてしまったようでした。
交流をしているのに、今までより深い交流を求めてきたんです。僕は恋愛ができない。だから彼女とも友達でいるしかなかったんですが……その友達関係も築くのが難しくなって僕はツイッターをやめた」

ざわざわとみんなささやき合った。まあ、誰が悪いのかよくわからない話だ。
ツカオンが気味悪いせいか、心無いやつのせいか、彼女の要望に応えない僕が悪いのか。
けれど、山田紀子は突如として立ち上がった。そして声をあげようとしたとき――。

「お前が悪いんじゃ、ぼけえええええっ!!!」
「ええええっっっ!!!???」
八千草が奇声をあげて高くジャンプしてお得意の回し蹴りをくらわせてきた。
かるーく数メートル吹っ飛び、僕は床を滑った。机も僕の体と一緒にがたがと滑っていく。
どんだけ威力あるんだよ!?

「ぐっ……マジで死ぬ……」

くらくらとしている、僕を見下ろすように八千草が立った。見せパンが見える。
満身創痍すぎて全く持って興奮しないが。
「よし、次の目的が決まったわ」
「な、なんだよ」
「決まってるじゃない。そのツカオンに謝るのよ」
「僕が全部悪いって言うのか」
「そうよ。女の子はひとつも悪くないのよ。私はいつだって女の子の味方なの」
「男女差別だ……」
「あんだと?」

男前すぎる八千草紅子。彼女が不敵に微笑んだ瞬間、教室にいた女子が「やっぱり紅子サイコー!」という黄色い声があがりはじめた。演劇部でも男役にチャレンジしていたな、確か。
男女無差別にモテることで。
僕は、虚しくなって少しだけ、泣きそうになった。


つづく。







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