雨の日に思い出すのは。(忍たま二次)

雨が降ってきた。

「鉢屋、どこか山小屋を探そう」
「そうだな」

しばらく走ると、山小屋が見えてきた。ぼろい山小屋だったが、雨くらいはしのげそうなので、二人はそこを今夜の宿と決めた。
無事、とある城の武器の量と忍びの数を調べおえ、依頼主に報告しおえた日の帰りだ。
焦る必要はなかった。

鉢屋と呼ばれた青年と組むもう一人の忍者は、暖炉に火をつけようとしている青年をこっそり観察する。
忍術学園にいるときから忍の世界では、引く手あまただったようだ。
一緒に仕事をするようになって、それも納得がいく。彼の変装は本当に見分けがつかず、完璧だった。
学生のころは背丈の違う者には化けれなかったそうだが見事、それも克服し今では老若男女なんでもござれ、だ。

今、彼は穏やかそうな青年に粉している。
火がつくと嬉しそうな顔をした。人の好さそうな青年の顔だ。しかし、これが彼の顔というのは、どうもしっくりこない気がする。彼の性格はわりと穏やかなものではない。

「それは、誰の顔だ?」
「なにが?」
「とぼけるな。お前が仕事が終わったあとに落ち着くその顔だよ。どうせお前の顔じゃあないんだろう」
「まあね。それを聞いてどうするの」
「別に。ただ、こんな雨降りで何もすることがないから暇つぶしで聞いたまでだ」
「雨の日は本を読めばいい」

そう言って微笑む。これもこいつが言わなさそうな言葉に思えた。
ただ、付き合いが短くこれが本当の鉢屋三郎と言われればそれまでの話だが。

話す気がないのか、と深いため息をついたときだ。
ふいに笑顔を消して鉢屋が切り出した。

「――昔ね。不破雷蔵っていう友人がいたんだ」

雷が遠くで鳴っている。ざああ、という雨の音と屋根をたたく音で一瞬聞き取りずらかった。
耳をすます。

「学園を卒業して、わたしたちは一緒に組んだ。この顔は彼のものだ。わたしは誰にも素顔を見せることはない。だから素のわたしは常に雷蔵だった。息もぴったりで、わりと成功率も高かったよ。ときに雷蔵の迷い癖が失敗につながることもあったが、わたしが助けてなんとかやってきた」
「迷い癖? それは忍者の三病と呼ばれるやつじゃないか。よくそんな奴と組んでいたな」
「わたしも彼に助けられている面もあったからね」

そこで間があいた。今、そいつはどうしていると聞くのはためらわれた。
一緒にいない、ということは。

「彼はいつも迷うくせに『あのとき』は迷わなかった」

ぱちんと、炎がはぜた。赤い炎に照らされた鉢屋の目は遠い過去に飛んでいる。
半眼で、眠そうに見えた。
いや、眠くはないはずだ。瞳がほの暗く少し、苛立ちもまざっているような気がした。
あの、鉢屋三郎が苛立ち?

「あのときも今日みたいに雨が降っていたよ。わたしたちは追手に追われていた。ぬかるんだ地面を走り木々を飛び、夜の道を駆け抜けたが相手はどこまでもついてくる。そして、気付いたらわたしと雷蔵は崖を飛び降りていた。なんとかわたしが腕一本で崖から飛び出た枝につかまり雷蔵の手をとることができた。しかし、枝は細く二人分の体重を支えるには足らなかった……」
「まさか」

まざまざと浮かんだ映像に喉仏を鳴らす。
この先の展開が嫌な想像しかしない。

「そのまさかだ。雷蔵は『死ぬなよ』と言って自らの手を離したんだ。こういうときに限って雷蔵は一切迷いがなかった。一切だ」

鉢屋は枝をぼき、と折った。

「死ぬなよ、って言われれば生きるしかない。不破雷蔵あるとこに鉢屋三郎ありと言っていた手前、一緒に死にたかったが、そうもいかない。それでも彼が死んでから、しばらくは呆けていたがね」
「どうして、また死んだやつの顔をして仕事してんだ」
「雷蔵の死体が上がらなかったからだ。彼がもし生きていたとして、わたしの素顔を知らないのだから探しようがないだろう。だからいつでも会いに来れるよう、雷蔵の顔をしている。この顔が好きってのもあるけど」
「………そんなに良い顔か?」
「雷蔵を侮辱すれば殺すぞ。まあ、わたしだけが良さに気づいていればそれはそれで都合がいい」
「さいですか」

それきり会話が続かず、沈黙が続いた。雷は遠くなっていき今は雨の音しか聞こえない。
段々と、眠くなってきたときだ。

鼻をすする音が聞こえて、覚醒する。
目の前の男がなぜか泣いていた。

「おい、まさか泣いているのか」
「雷蔵を思い出すとわたしはいつも泣けてしまう。すまない」

誰にでも変身でき、自分の感情など無いのかと思っていた。仕事をこなすためには非情にさえなれる鉢屋三郎。
生に対する執着がすごい。
きっと、いつも「こんなところで死んでたまるか」と思ってこなしているのだろう。
その、友人に会うまでは。

「きっと、生きているさ。再会したときに同じ顔で泣けばいい」
「そうだな。そうするよ」

雨はいつか止む。
男は、友人のためを思って泣ける彼こそが鉢屋三郎という男か、と改めて思い直した。



おわり。




※ ※ ※


はい、どうもー。また双忍二次創作ー。
あれですね。双忍のネタって死にネタ多いんですよ。だから私もやってみた。
かなりの率で不破が死ぬんですよね、残された三郎やばいよ。かわいそうみたいな。できればずっと二人でやってほしいですね。ならなぜ書いたかというと思いついたから。ちなみに話し相手はどっかの忍者Aオリジナルです。

とあるサイトで二人の体が入れ替わるネタあって、周りは全く困らないんですけど、雷蔵もあまり困らないんですけど、三郎だけ驚くんですよね。彼の目から見た空はこんなに青く美しいのか、って。
三郎暗くて、雷蔵が天然救い系みたいなネタ好きです。


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君といると楽だから。

「あー! やっぱり、鉢屋三郎先輩だ!」
「ご名答~」

いつもの如く、忍術学園の生徒たちに変装して悪戯をしかけている鉢屋三郎。
乱太郎たちが後ろでまだ、喚いているが、今度は道を歩いていた立花仙蔵に化けて後ろからの追ってを巻く。
5年生の教室に戻り、予習のページをどこにしようか迷っている不破雷蔵の隣に腰かける。
そして、瞬時に不破雷蔵の定番の顔に落ち着いた。

「また後輩をからかっていたね」
「面白いようにひっかかってくれるからね。でもやっぱり君の顔が落ち着くよ」
「僕の顔がね……前にしんべえの顔がシンプルで変身しやすいって言っていたけど。そちらのが楽なんじゃないの」
「それはそうなんだけど。身長がどうしてもちぐはぐになってしまうからなあ」
「なるほどね。ところでこの休憩時間に予習でもしようと思っていたのだけど、どのページをすればいいと思う?」
「いや、もう時間ないよ」
「え? あ、ほんとだ。まいったなあ、迷っているうちに休み時間が終わってしまった……」
「私と一緒に今度は二人で後輩をだませるか試そう。そちらの方が有意義にすごせる」
「悪いやつだなあ。でも楽しそうだね。やろうやろう」
そう言って微笑む不破雷蔵。迷っている時間が勿体ない。それよりも自分と一緒に遊んでいた方が楽しいに決まっているのだと笑顔をみながら鉢屋三郎は考えた。

そして、ふと笑顔を曇らせ黒板の方に視線を向ける不破。

「でも、時々さあ。君の方が完璧な不破雷蔵で、迷ってばかりのダメな自分の方が偽物なんじゃないかなあって思うときがあるんだよ」
「くだらないことで悩んでいるね」
「だって、そうじゃないか。君は成績優秀で迷い癖もない。なりたい僕、そのものだ」
「私と君は根っこのところでは違う。本当はそこまでマネできたら完璧だけどさ」
「もうそっくりじゃないか。悪いところ以外は」
「そうかな。君の優しいところまでは、真似できない。姿だけ変えられているに過ぎないよ」
不破雷蔵は「優しいかなあ」と、また鉢屋の言葉で考えを迷いだした。

この友人は忍者の三病といわれるひとつ「迷い癖」がある。それさえ無ければ彼も優秀な部類だ。
また、くだらないことに悩ませたとばかりに鉢屋は話を変える。

「君は私が常に顔を借りていることに不満はないのかい?」
「え、なんで?」
考えたこともない、とでもいう風に不破は声をあげた。
真似された人は大抵が迷惑そうにするものだ。確かにそうだ。
常に自分が二人いるという気分はよくないと思う。

「しんべいは身長差が困るんだろう。僕なら身長も変わらないし楽なんだったら構わないよ。僕が迷っているときも君が迷っていないなら、前向きな自分をイメージできる気がするしね」
はは、と笑う不破。鉢屋も同じ顔で笑う。

――そういうところが優しいのだ。

鉢屋は友人に感謝する。千の顔を持つ男と言われているが時々、自分の顔を忘れてしまうことがある。
そんなときは焦ってしまうが、もう忘れたら忘れたで不破に戻ってくればいいと安心できる。


君の隣にいれば、私は誰にでもなれる。

「ありがとう。私は君のことが好きだから君の顔をいつも借りているんだ」
「僕も君のことは好きだよ。って男同士が好きだよ、って言い合っているのも変だね」
「いや、まったく私はおかしくないと思う」
「仲がいい友人だからいっか!」
「それ以上の意味で私は言ったつもりだけど。もちろん優しい君は責任とってくれるだろ」
「――え」

笑顔のまま不破が固まる。もちろん冗談だ。
彼がまた迷いだしたので、私は思い切り不破の背中をたたいてやった。


おわり。




※ ※ ※


ついにやってしまったー!
最近、忍たまの5年生の先輩、不破雷蔵と鉢屋三郎にときめいてやばい。
私はBLとか興味ないんだけど、この二人は好きなんですよー。双子? とよく言われるけど(最初そう思った)変装の名人が友人に化けているんですよ。
色々な人に化けているくせに最終的に友人の顔にいつも落ち着くとか、どんだけ仲いいの!?と。
わりとシリアス設定にもなれる二人。

双忍と検索すれば様々なイラストとかヒットして楽しいですが、時間泥棒ですね。
二次は怖い。
情報によると将来的に二人で仕事するようになるみたいです。作者がそう言っているとか。
そこもポイント高い。

しかし、まだ二人のしゃべり方とかよくわかっていないから適当です。
ちょっとした息抜きってことで。


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